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21年度入試対策(校長インタビュー)

トキワ松学園小学校校長

飯田靖夫さん



――熱心なトキワ松ファンが多いそうですね。
飯田 ええ、ありがたいことです。
――補欠の繰り上がり合格をじっと待つ保護者も多いようです。
飯田 例年、男女とも10名前後の補欠を出していますが、ここ2〜3年、合格辞退者が少なく、今年の繰り上がり合格は男女とも5〜6名前後です。
――募集数は男女20名ずつ計40名、親が卒業生とかきょうだいが在校生というケースが多いでしょうから、実質的な競争倍率はかなり高くなっているでしょうね。
飯田 いや、ご両親が卒業しているとか、きょうだいが在学生であれば有利かというと、そんなことはありません。男女合わせてわずか46人しか受け入れることができないのです。関係者の子弟を特別扱いする余裕はほとんどありません。それに関係者枠をつくると新しい風が入ってきません。

――トキワ松は関係者の入学が多いと思い込んでいる保護者が多いようですが、誤解ですか?
飯田 職員全員で一生懸命に試験問題をつくり、試験に立ち会い、合否の判定に関わっています。この子ならわが校にふさわしい、この子は育て甲斐がある、この親ならわが校の教育方針に賛同していただける、みんなで話し合って真剣に合否を決めているのです。正規のルート以外に別の入学ルートがあったら、まじめに入試問題をつくる気にはなれませんよ。

どういう方面からの紹介であろうと、お子さんの成績が合格点に達していなければ合格させるわけにはいきません。子どもの成績が合格ラインに達していなければどうしようもないのです。残念ながらとお断りせざるを得ません。ですから、合格したお子さんは、かりに姉や兄が在校生だったとしても、そのことがプラスされて合格したのではなく、お子さんの成績が合格ラインに達していたのです。

●1クラス23人だからできるきめ細かな指導

――トキワ松ファンが多い理由の一つは、1クラスあたりの児童数が23名という少人数制にあるといわれていますが‥‥。
飯田 そうですねえ。とにかくどの教師も面倒見がいいことはたしかです。朝7時半くらいから来ている子どももいますが、授業が始まるまでの45分間、教師の誰かが子どもたちと一緒に遊んでいます。現場の教師は、子どもたち一人ひとりの性格や健康状態だけでなく、家庭環境まで把握しています。言葉に出していえば、あるいは活字になったときは、その程度のことはどこでもやっているということかもしれませんが、30人40人に対するきめ細かさと23人に対するきめ細かさはやはり違うのです。子どもの数が30人40人ではやりたくてもできないことが、23人ならできることはたくさんあるのです。

――たとえば、どういうことですか。
飯田 私どもの場合、授業中、1回も発言しなかったという子はいません。大勢の前で発言するのは大人でも気後れしますが、子どもでも同じです。しかし教師は一人ひとりの子どもの表情を見て、この子は答えがわかっていても恥ずかしがって手をあげないとわかれば上手に発言を促します。答えがわからない子でも、答えやすいようにヒントを出すこともあります。授業でも遊びの場でも、子どもに疎外感をもたせるようなことはさせません。

――子ども同士の交流も密になるでしょうね。
飯田 男の子と女の子はそれぞれ11〜12名です。この数なら、顔は知っているけれど、どんな性格の子かわからないということはないですね。お互いに相手の気持ちがよくわかりますから「派閥」ができにくい(笑)。いじめを心配する親御さんも多いと思いますが、そうした心配はまったくありません。

喧嘩があったとしても、きょうだい喧嘩みたいなものです(笑)。休み時間に校庭をご覧になるとわかりますが、本校の場合、5〜6年生と低学年の子どもが一緒に遊んでいるケースがとても多いのです。学年が異なっても子ども同士の交流が活発に行われています。低学年の子どもと遊んでやれ、世話をしろと指導しているわけではなく、自然とそうなっています。

1年生から6年生まで全学年でわずか270名です。しかも1、2階が小学校で3、4階が中学です。自然ときょうだいのような関係がつくられていると思います。まあ、23人に担任を1人ずつ置くわけですから、理事会のほうでは1人でも多くとれと言います。しかし子どもの成長というのは、1年生のときの体重が6年生になると倍になるんですよ。身長差で30センチも違うんです。だから理事会には、1年生の小さい子を1人2人ふやすのはいいけれど、高学年になったら空気の量が少なくなるから、定員を増やすことはご容赦いただきたいと(笑)。

●15分を1単位(モジュール)としてカリキュラムを組む

――1年生の時間割りをみると、同じ「さんすう」の授業でも15分授業と45分授業がありますね。
飯田 私どもの場合、15分を1単位(モジュール)として授業の時間割りを決めています。1モジュールの計算や漢字の授業もあれば、図工や生活科の授業は6モジュール(90分)です。すべての教科が45分授業という画一的なものでいいのかどうかという発想から15分を1単位とするモジュール制を取り入れています。学年によって、あるいは教科によって授業時間を変えてもいいと考えてのことです。

の練習とか音読であれば、短時間で集中させたほうが効果的ですから1モジュール(15分)、図工はみんなが好きですから、6モジュール(90分)です。図工の時間は、トイレには誰も行きたがりません。退屈な授業のときはトイレが近くなります(笑)。1年生だから長い授業はできないとか、高学年だから長い授業ができるということではなくて、教科別、発達段階、学年によって、いろいろ工夫して、バラエティに富ませたほうがいいということです。

●きちんと躾られているかどうかはわかります

――入試の評価ポイントはどの辺にありますか?
飯田 入試では、ペーパーテストと集団遊びのテストを行いますが、ペーパーテストでは、年齢相応の知識が身についているかどうかを見ます。難問奇問の類いはほとんど出しません。ですから、ペーパーテストではそんなに差がつくということはありません。集団行動では、12人ぐらいのグループで20分ほどゲームをさせます。ケンケンをやったり、どんじゃんけんをやったり、それをグループごとで対抗させますから、けっこう子どもの地が出ます。

その後、自由に遊ばせるテストが40分ぐらいあります。いくつか遊び道具が置いてありそこで自由に遊ばせます。教師は何も指示しません。このテストも子どものふだんの姿を見たいというのが狙いです。地が出るというと、マイナスイメージがありますが、好ましくない部分だけではなくて、その子の光る部分も我々は見たいのです。リーダーシップを発揮したり、きちんと後片づけをしたり、あるいはお友達に声をかけたりとか、まあ、その辺は訓練していることもあるでしょうが、どの子もきちんとできています。しかし、時間が経ってくるにつれて、だんだん自分らしさというか地の部分が出て来ますね(笑)。

――後片づけをするかしないかは採点の対象に入りますか。
飯田 当然入りますが、その辺は、訓練されていますから、後片付けをしない子はほとんどいません。
――後片づけの仕方で差はつきますか。
飯田 ポンと投げ入れる子は少ないですね。ただ片づけなきゃいけないと形式的にやっている子と、本当に自分できちっと整理しようとしてやっている子の差はやはりわかります。家でしっかりしつけられているかどうかは大体わかります。

●23人学級のメリットは中学受験で発揮される

――男子は全員が中学受験をしなければいけませんが、難関校にも多数の合格者を出していますね。
飯田 受験指導にはかなり力を入れていますが、23人という少人数制の中で、低学年から基礎をしっかり鍛えていることが大きいと思います。また本校の場合、5年生から国語、算数などの授業時間数を文科省の基準よりもかなりふやしています。算数については、教科書以外に、受験塾で使っているような問題集も利用して指導しています。国語も、文章題などを重点的に指導するなど、5年生から実質2年間は受験指導を積極的に取り入れています。放課後は、通常の授業以外に基礎が遅れている子については、担任や教科の教師が補習授業をします。

――塾に通う子も多いでしょうね。
飯田 ええ。ほとんどの子が通っているようですが、本校の場合、23人学級の中で教師がそれぞれの子どもの適性や能力を的確に把握しています。早い段階から、その子に合った志望校選びができているだけでなく、きめ細かな弱点対策も可能です。それが難関校への合格実績に結びついていると思います。これも23人学級の大きなメリットと思います。

●保護者面接を重視する理由

――保護者の面接を重視しているようですね。
飯田 ええ。私どもの面接は、むろん志望理由はお聞きますが、むしろ、私どもの教育方針にご協力いただけるかどうかを確認する場という側面があります。もしご縁ができたら、これこれの点は協力していただかなくてはいけませんがよろしいでしょうかと念押しをさせていただきます。学校説明会のときには、縁があって、私どもにお入りいただくことになったら、いろいろな形でご協力いただくことになる、一口でいうなら、みなさんには46人の親になってほしいとお願いしています。子どもの教育は学校と家庭の二人三脚であるべきだというのが私どもの基本的な姿勢ですが、もう一歩進めて、ご自分のお子さんだけでなく、46人の子どもの親になったつもりでいろいろな学校行事に参加するだけでなく協力してほしいと‥‥。

――保護者会は多いのですか?
飯田 担任が主催する学級懇談会が月に1回ほどあります。だいたい1学期に3回、2学期3回、3学期2回、計8回ぐらいです。そのほかバザーとか、もちつき大会とか、運動会もあります。運動会は親子運動会ですから、ご両親には万難を排して参加してほしいと思っています。そういうことを含めると、学校においでいただく回数はけっこう多くなります。もしご縁ができたら、その辺のことをご納得いただきたいということをお願いしますから、ご両親の面接は重視しています。

●ご両親が共働きというケースは年々増えています

――父親が面接に出席できない場合はマイナスになりますか。
飯田 いや、マイナスにはなりません。母親が1人の場合も結構ありますから。
――両親面接の評価点が高くても、肝心の子どもの成績が悪いという場合、あるいはその逆もあると思いますが、どうしますか?
飯田 このご両親にはぜひ入ってほしいと思っても、子どもの点数が足りなくてだめだったというケースもあります。もうこれはしようがないですね。やはり子どもの成績しだいです。

――仕事をもっている母親は不利ですか?
飯田 そのご心配は無用です(笑)。ご両親が共働きというケースは年々増えています。学校行事への参加回数が多いといっても、4月に年間の行事予定を出しますから、みなさん、なんとか仕事を都合していただいています。それに、どうしてもお母さんが参加できないときは、お父さんでもいいし、おばあちゃんがいらっしゃることもあります。

●自ら伸びようとする力信じて待つ

――御校のホームページの中で、飯田先生は、「児童一人ひとりの伸びようとする力を信じ」とおっしゃっています。伸びようとする力を「引き出す」ではなく、「信じる」という言葉を使っていますね。意識的に使い分けていますか?
飯田 まあ、最近の子どもは過保護・過干渉だとか、ひ弱になっているとか、いろいろなことを言われていますが、私は決してそうは思っていません。どの子もこれから伸びようとするすばらしい力を持っているんですよ。我々のところに通ってくる子どもだけでなく、公立の学校に通う子どもたちが本校の前を通りますが、校門の前で児童を迎えている我々を見て挨拶をしてくれます。すばらしい子どもばかりだと思っています。

しかし子どもの能力を引き出そうとすると、教え過ぎ、詰め込みになってしまいかねない。むろんほったらかしはいけませんが、かといって強圧的に上から教え込むことも避けなければいけない。その辺の兼ね合いがむずかしいのですが、基本的には、子どもには自ら伸びようとする潜在的な能力があります。それを引き出すというより、みずから伸びるという力を信じて待つ。そのためには、そういう環境を整えてあげることが大切だと思いますね。
――ありがとうございました。




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