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――20年度入試では、3か月という短期間で2人の子どもを立教と幼稚舎に合格させ、19年度入試では、わずか1か月の特訓で国立大学附属小学校に合格させたようですが‥‥。
矢崎 ええ。どのお子さんも素質的にいいものをもっていたし、何よりご両親のご協力がありました。でも、だからと言って短期間に合格できる確率は極めて低いと思います。できるだけ早く取り組めば、それだけよい仕上がりに持っていける自信はあります。
――幼稚舎と立教に合格した子は、それぞれ何月に入室しましたか。
矢崎 2人とも受験する年の7月ですから、入試まで3か月しかありませんでした。たまたまお母さん同士が姉妹で、お姉さんのお子さんが立教、妹さんのお子さんが幼稚舎に合格しました。
――どんないきさつでこちらに入室したのですか。
矢崎 お姉さんのお子さんは大手の教室に通っていました。最初から立教志望でしたが、お話をお伺いすると、20〜30人単位のレッスンには不向きだったようです。このお子さんは1月生まれなのでちょっと幼い感じでした。おとなしくて、手先もあまり器用とはいえませんでした。また、立教はペーパーテストがありませんから、ペーパー対策が手薄だったようです。
私どもにいらっしゃったときはペーパー問題がほとんどできませんでした。何か質問しても、すぐには反応できないところがありました。自分の名前を答えるときでも、「え〜と」と、一呼吸おかないと名前が出できません。一口で言えば、「幼い」という状態ですから、大手の教室の集団レッスンでは効果がなかったようです。お母さんも、わが子の弱点はわかっていたけれど、個別に相談しても納得できる対応がなかったようです。
●ご両親が私の指導方針を受け入れてくれたことで成功
――受験する年の7月というと、基礎の勉強は終えて、そろそろ志望校対策に入る時期ですね。受験準備はかなり遅れていたと思いますが、どうしました?
矢崎 ペーパーテストがないといっても、ペーパー問題に対応できる基本的な知識がないと、入試には対応できません。集団行動や共同制作でも、状況判断力も身についていないし機敏な行動もとれません。その辺をお母様にお話して、通常の年長コースでペーパー問題を勉強するだけでなく、巧緻性のトレーニングセットをやっていただいたほか、絵画制作コース、受験体操コースもとってもらいました。週に5日か6日は通ってもらいました。
――まだ間に合うと見込んだ理由はなんですか?
矢崎 そうですねえ。とにかく慎重で、指示行動はうまくできないし、言語面の発達もふつうだったし、最初は困ったなと思いました(笑)。ただ、ご両親がどうしても立教に通わせたいという強い希望をもっていたことと、このお子さんは素質的にはとてもいいものをもっているという印象をもちました。じっくり向き合って話すと、誰も話さないような面白いことを話すのです。潜在的な能力をうまく引き出せれば可能性はあると思いました。それには、ご両親が私の指導方針を全面的に受け入れてくれることが前提条件でしたが、全面的に信頼していただけました。
――お子さんにはどんな指導をしましたか?
矢崎 いろいろありますが、たとえば、あらゆることに自信を持たせるようにしました。最初は、仲のいいお友達の名前を教えてくださいと聞いても答えられませんでした。相手の子に、あなたは友達じゃないよって言われたらどうしようって思って言えないのです。ですから、どんなことでもあなたがいいと思ったこと、正しいと思ったことは言ってもいいのよ、何も言わなければあなたが何を考えているかわからないんだからと、いろいろな機会を通じて自信を植え付けました。
何とかなりそうだと期待できるようになったのは、この子が毎日嫌がらずに来てくれたことです。楽しんでいる子は必ず伸びます。たまたまこの教室には、同じ幼稚園のお友達が何人かいたから緊張しないで伸び伸び勉強できたということもあると思います。子どもだけでなくお母さん同士もお友達になってくれました。ふつう、幼稚園が同じという場合、同じ日に授業を受けるのを避けたり、顔を合わせてもお互いに敬遠するなど、ライバルになってしまうケースが多いのですが、みなさん、仲良くしていただきました。私のほうからも、ここの教室のお友達はライバルではなく、あなたたちのライバルは外にたくさんいます、お母さん方が仲良くなって、いろいろな情報を交換したりするのも受験対策の一つですと折にふれて申し上げていました。
●ご両親の教育が行き届いている子でした
――幼稚舎に合格したお子さんも、ほかの幼児教室に通っていたのですか。
矢崎 ええ。ここを含めて2か所の教室に通っていましたが、しばらくして私どもだけになったようです。このお子さんは、聖学院と淑徳と幼稚舎を受けて、全部合格しました。ただ、ご両親はもともと私立に行かせようとは思っていなかったようです。国立がダメなら公立でもいいというお考えでした。このお子さんは、早稲田、幼稚舎向きという印象がありましたから、国立だけでなく、私立もいくつか受けたらどうかとお勧めしました。じゃ、そうしますとはおっしゃっていましたが、幼稚舎については本気ではなかったようです(笑)。
――準備期間が3か月、どう指導しました?
矢崎 もともとできるお子さんだったし、ペーパーの勉強もある程度はこなしていましたので、3か月あれば何とかなると思っていました。そのお子さんも、夏期講習からはほぼ毎日通ってもらいましたが、ぐんぐん力がついてくるのがわかるくらいに吸収の早いお子さんでした。9月からは毎週、立教志望のお姉さんのお子さんと一緒に絵画コースにも通ってもらいました。最初は、私が描いた絵をそのまま真似るという形です。模写の力も必要ですから。その後、季節の絵とか、座って食べる絵、海で泳ぐ絵、お芋を掘る絵など、いろいろ描かせました。
――お子さんの教育には熱心なご両親でしたか?
矢崎 ええ。お父さんはふつうのサラリーマンですが、週末のレッスンはほとんどお父様が連れていらしたほどです。お子さんが釣りをしたいと言えば、海で船釣りをさせたりするなど、お子さんの興味をもつことにはできるだけ体験させてあげるという考え方をもっていたようです。お子さんに、「好きなお料理は何ですか?」と聞くと、「お母さんがつくる揚げ物です」と言っていました。何も練習していないのに、そう答えるのですから、ご両親の教育が行き届いているという印象です。しつけ面でもとてもきちんとしていました。授業に遅刻したときのことです。教室に入ってきたとき、みんなの前で「遅れてすみません」と挨拶したのです。ふつう、こういうときは、お母さんが「すみません」と言って、子どもは黙って座るだけです。
●短期間で仕上げるには子どもの長所を引き出すのがコツ
矢崎 その姉妹のお子さんは、最初からご挨拶はきちんとしていました。集団行動の授業でも、幼稚舎に入った子は、グループで何かを決めるときには、「ねえ、どうしようか」と口火をきるタイプです。みんなの意見が分かれたときは、「じゃ、こっちにする?」と何とかまとめようとするリーダーシップがとれる子でした。ふだんから、どうすればみんなと仲良く一緒にできるかを考えようねと教えていますが、そういう指導がすぐ理解できる子と、そうでない子がいます。この子の場合は、飲み込みの早い子でした。一般的に、男の子の場合、我が強くて、僕がやりたい、僕が、僕がという感じになってしまうのですが、そうしたところはありませんでした。
――しつけがきっちりできている子は、その場に応じて的確に反応ができますね。
矢崎 ええ。私どもでは、授業が始まる前、みんなの前で発表する練習を必ずやります。「お名前は何と言いますか」「きょうのお昼ご飯は何を食べましたか」「好きなテレビは何ですか」などと質問します。3人ずつ前に出てきて、ご挨拶をして、話をして、授業が終わったらみんなでそろって挨拶をして帰りますが、必ず椅子をちゃんと両手で戻しましょうと教えています。3人で一緒に挨拶をするというのは、幼児にはけっこう難しいんですよ。みんなのお顔を見ながら、軽く声をかけたり、相手を気遣うというのができないのです。でも、何回か練習させると、できるようになります。
●服装を変えるだけで言葉遣いが改まる
――19年度入試では、双子のお子さんのうちお姉さんと一緒に、弟さんも受験させたらどうかと勧めて、わずか1か月の指導で学芸大竹早小学校に合格させたようですね‥‥。
矢崎 ええ。2人のお子さんの印象がとてもよかったのです。清潔な感じで、しんがしっかりしているという印象でした。幼いながらも礼儀正しく、落ち着いていました。お子さんを見ただけで、どんな家庭か、どんな育てられ方をしてきたのかが想像できるようなお子さんでした。お姉ちゃんは学習院が志望校でした。なぜお姉ちゃんだけ受験させるのかと聞きましたら、「弟は幼いから」とおっしゃるんです。たしかにそうなんですが、それでも持って生まれた育ちの良さがあらわれているお子さんでした。前に通っていた幼児教室では、お姉ちゃんに比べると、いろいろな面で、たとえばペーパーでも理解力が劣っていると指摘されて受験は諦めてしまったようです。
――どう指導しましたか?
矢崎 1か月という短期間でしたが、挨拶の仕方や基本的な運動のほかペーパー問題を勉強してもらいました。基本的な生活習慣がきちんと身についている子でしたから、飲み込みが早く、びっくりするほど短期間でレベルアップしました。また、このお子さんはとても絵が上手で、自分の世界がしっかり絵の中では表現されていました。
――試験当日のアドバイスは?
矢崎 お名前を呼ばれたら「大きな声で返事をしなさい」と(笑)。後から考えると、時間的にも厳しいので良いところだけを伸ばすようにし、不得手なところはお母様に家庭で対応していただきました。短期間で仕上げるには、子どものいいところを引き出すのがコツだと思います。それから、これは私どもの一貫した指導方針の一つですが、第一印象を大事にしました。歩き方とか、返事とか、身ぎれいにすることとか、姿勢とか‥‥。
なんだ、そんなことかと思う人も多いと思いますが、やはり歩き方一つにも育ちというか家庭環境が出ます。キョロキョロしない、体をグラグラさせない、背筋を伸ばして、前をしっかり見て、キビキビと歩く。その辺をきちんとしていれば、とりあえずは試験官の目に止まります。姿勢が悪かったり、自信なさそうに、かがんだ感じで歩いていたりするといい印象を与えません。ミスコンテストではないのですが、堂々とした感じできれいに歩けると、女の人もきれいだけど、子どもも本当に自信を持ったいい子に見えます。
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――こちらの教室は淑徳小学校への合格者が多いですね。
矢崎 私どもでは、3年前にこの教室を立ち上げましたが、やはり地元ですから、淑徳小と希望される方が多く自然と淑徳小に強い教室ということになって特色を出したいと思っていました。淑徳にお子さんを通わせているお母様から学校の様子をお伺いしたり、過去問をいただいたり、またこちらでもいろいろと調べて、学校の特色や出題傾向などをつかみました。1年目は、どれくらい合格実績が出せるかわかりませんでしたが、9人の合格者を出すことができました。2年目にはさらに人数がふえてクラスが2つになり、合格者も15人と増えました。昨年からは淑徳オープン模試も2回ほどやり、外部の方もまじえてテスト講評と説明会も行いました。
――地元の教室だから有利というわけではないでしょう。ご自身の指導法のどんなところがよかったと思いますか?
矢崎 受験というのは、お子さんの家庭環境によっては、生活のすべてを変えなければならないという場合もあります。例えば、お母様にはジーンズで通うのは遠慮していただくようにお願いしています。髪の毛を元の色に戻していただくこともあります。子どもも、できるだけふだんとは違う格好で教室に通うことをお薦めしています。家では寝そべって本を読んでいる子も、改まった服装のときは、きちんと姿勢を正すという気持ちになります。些細なことのようですが、それがとても大事なのです。
小さい子どもというのは、場に応じて言葉遣いを改めたり、きちんとした態度をとるということができません。学校によっては、子どものふだんの姿を見たいために、「今日は楽しく遊ぼうね」などと、雰囲気を盛り上げようとしますが、そのときにワル乗りしたら確実に減点です。ここは大声を出してもいい場所なのか、ふざけてもいいのか、言葉遣いを改めたほうがいいのか、静かにじっと待っていたほうがいいのか、そうした状況判断ができるようになるには、まず姿形から入ったほうがわかりやすいのです。改まった服装に慣れないと、試験のときにもぎこちなくて落ちつかないこともあります。その上で、授業の中で、なぜここでは騒いではいけないのか、じっとしていたほうがいいのか、どんな行動をとったらいいのか、自分で考えて判断できるように仕向けるようにしていきます。
――精神年齢を引き上げるということですか?
矢崎 ええ。この教室の子ども達の精神年齢は高いと思います。できたかできないかにこだわるお母さんも少なくないのですが、「ママ、次にできればいいんだよ」と、逆に子どもに慰められるお母さんもいます。○を書き直したり、色を書き直したりする子がいますが、「間違うとママに叱られるんだな」とわかる。そんなときは、次にできればいいんだよ、ママには先生から言っておいてあげるから大丈夫って言うと、子どもは安心するんです。「私も考えが変わって救われた」というお母さんもいます。
他人と比べたらだめ。こんなにいい絵がかけるんだから、ペーパーがちょっとできなくてもそんなに心配することはないとか、遅くはないよとか、いいところを言ってあげるようにしています。そうすると子どもは安心し、心が落ち着きます。できた、できないの結果だけでアドバイスするのは簡単なんです。そうじゃなくて、お母さんや子どもに必要なのは、その辺のフォローだと思います。
――ありがとうございました。
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