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●元気な返事ができる子が有利
――どの子も元気がいいですね。返事はいいし、先生から聞かれたことに対してはハキハキと答えています。
藤井 ええ。
――最初から、こうでしたか?
藤井 いや、教室に来た当初は、名前を呼んでも返事はしないし、話しかけるとパッとお母さんの後ろに隠れてしまう(笑)。でも、何回か教室に通ってくるうちに、名前を呼ばれれば元気よく「はい!」と答えるようになります。私どもでは、授業が始まる前に、教師との一問一答と言ったら大袈裟ですが、子どもと会話をするようにしています。
まず、みんなの名前を呼びます。元気よく返事ができれば、とてもよく返事ができたと誉めます。声が小さくてよく聞こえないようなときは、「元気よく返事をしようね」と大きな声が出るまで何回も練習します。返事だけでなく、「朝ご飯は何を食べましたか?」「夕べはよく眠れましたか?」「今朝はお母さんのお手伝いをしましたか」など、どの子にも問いかけ、一言しゃべってもらうようにしています。

――元気よく返事をする、これにこだわる理由は何ですか?
藤井 大きな声で返事をする、ハキハキと答える、テキパキと行動する、そうすると、元気のいい、快活な子どもだなという印象を相手に与えるだけでなく、何回もくり返していると、自然とそういう活発な子になります。小学校受験にはこれがとても大切なことです。
名前を呼んでも返事がなかったり、何か質問しても答えが返ってこない、動きにメリハリがないという子どもの場合、ペーパー問題がよくできていても、あるいはきちんとしつけられていたとしても、その子のもつ良さが相手に伝わらないのです。ペーパーはほとんどできていた、行動観察や面接でも大きなミスはなかった、でも不合格になったというケースがたまにありますが、試験官の第一印象があまりよくなかったのが原因ではないかとも考えられます。
合格圏内には、ペーパーの点数もその他の評価点もほぼ同点という子がたくさんいます。その中から何人かを不合格にするという場合、表情が乏しい子とか活気でないという印象をもたれるのはやはり不利です。
●内気な子、表情の乏しい子は意識付けで治る
――表情が乏しいとかおとなしいといったことは、もって生まれた性格もあると思いますが‥‥。
藤井 いや、多くの場合、慣れていないだけです。大人から名前を呼ばれたら元気良く返事をする、あるいは自分の考えていることをハキハキと答えることができるかどうかは、性格ではなく、そういう機会がなかっただけです。朝起きたときにお父さんおかあさんにきちんと「おはようございます」と挨拶をさせているとか、外でご近所の知り合いに会ったとき、「こんにちは」と挨拶をさせている家庭であれば、初めての大人に対してもきちんと挨拶が出来ます。
子どもでも、相手やその場その場の状況に応じて言葉遣いや振る舞いを改めたりするだけの知恵はあります。ここはていねいに「ですます」で答えたほうがいいと判断すれば、そのような言葉遣いをするようになります。それくらいの判断力はもっています。それができないというのは、そういう機会がなかった、あるいは教えていなかっただけのことです。“外面(そとづら)をよくする”という言い方をすると、誤解を招くかもしれませんが、元気良く返事をするだけでも、相手に好印象を与えるということを知ってほしいですね。
宝田 それから、表情の乏しい子がいますね。みんなと一緒に何かをやっていても、楽しいのかつまらないのかわからない。とても楽しいんだけれども、表情に出てこない。そんなときは、楽しいときは楽しいお顔をしようねと言います。○○ちゃんは笑うととってもいいお顔になるよ。きっと楽しいことがあったんだなって先生はわかるよと言ってあげると、それがきっかけで表情が豊かになる子もいます。
6歳までの間に、楽しいことがなかったのではなく、楽しいときや悲しいときにどんな表情をしたらいいか教えられていなかったのです。道ばたに咲いているお花を見て、なんてきれいなお花でしょう! とお母さんが感動すれば、それは自然とお子さんに伝わっているのです。表情の乏しい子はそういう経験が少ないんだなと思われてしまうかもしれません。
●表現力や説明力は訓練で身に付く
――授業前の、先生との一問一答も受験対策としてはいい方法ですね。
藤井 ええ。「朝ご飯は何を食べましたか?」と聞くと、最初のうちは、「卵焼き」とか「ノリとご飯と、え〜と、おみそ汁と‥‥」などと、単語を並べるか、文章になっていない話し方をしますが、これも慣れていないだけのことです。教えればきちんとした話し方ができるようになります。
――どう教えますか
藤井 「教室までどんな乗り物に乗って来ましたか」と聞いたとき、子どもが「バス」と答えれば、「バスに乗って来ました」と正しい言い方を教え、その通りに言い直させます。「バスの中に同じ年頃のお友達はいましたか」と、「バスに」「バスの」と、「てにをは」の使い方も教えます。これを毎回、くり返していると、きちんとした文章言葉が使えるだけでなく、正しく「てにをは」も使えるようになります。
ただ、こうしたことは一夜漬けでは身につきません。このため、私どもでは、授業が始まる前に、教師と子どもたちとの“ミーティング”を続けているわけです。10分ぐらいのときもあるし、30分もつづけるときもありますが、これが小学校受験にはずいぶん役に立っていると思います。
宝田 ペーパーテストから行動観察を重視する傾向が定着していますが、さらに、子どもの表現力を重視する傾向も出ています。国立学園のように、ペーパーテストの回答に対して、なぜそれが正しいと思ったのかを子どもに説明させるという試験方法を取り入れている学校もあります。この表現力や説明力といったものは事前に練習ができません。日頃の積み重ねが大事です。「電車に」「電車から」の後を言わせるといったこともします。
こういうのは繰り返すと正しい言葉遣いを覚えるようになります。「みかん」と「バナナ」はどういうところが同じなのか、違うのか。そういうときに「両方とも」という言い方も教えます。こうした指導の積み重ねがないと、子どもには表現力や説明能力は身につかないと思います。
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●西武文理に合格者が多い理由
――平成20年度の入試では、地域的に近いという理由もあると思いますが、西武学園文理小学校に19名、星野学園小学校に14名の合格者を出していますね。
宝田 西武文理はペーパー問題のレベルがかなり高いといわれていますが、行動面でのチェックも厳しいところがあります。合格者のケースをみると、「よく聞く」「よく話す」「よく振る舞う」、これは私どもの基本的な指導方針ですが、この3つがきちんと身に付いている子が合格しています。
ペーパーは満点に近い成績がとれていても、引っ込み思案とか行動的でない子の場合、補欠に回ったりするケースもあります。ありていに言ってしまうと、ちょっとぐらいペーパーが弱くても、返事がいい、ハキハキと話す、行動がテキパキしているという印象をもたれる子は有利ですね。やはり第一印象というのは大事です。「いい子だなあ」という印象を与えるかどうか、ここが合否を大きく左右すると思いますね。
――今、先生がおっしゃったことはどの学校にも大事なポイントになると思いますが、とくに西武や星野学園に合格者が多いのはなぜですか。
宝田 西武文理や星野学園に関しては、やはり情報量が多いということだと思います。過去問や面接での質問事項を細かく分析してみると、そもそもどんな子をほしいと思っているのか、ご両親には何を期待しているのかがある程度は推測できます。それに合格したご両親からの情報もとても参考になります。
たとえば、玄関から入るときに、何人かの先生がにこやかに見守っていてくれたという話を聞けば、子どもが靴をどういうふうに脱いだのか、母親が手伝ったのか、そのとき父親はどうしていたかなどをチェックしていたことが容易に推測できます。また、西武文理では、保護者には校庭の草取りなどをお願いすることもあるようですから、学校運営に協力してくれる保護者かどうかが面接での重要なチェック項目になっているということもわかります。
ですから、西武文理を志望する保護者に対しては、ペーパーだけに力を入れるのではなく、日頃からお子さんの言葉遣いや振る舞いには注意してくださいとか、面接時の受け答えの注意点などもアドバイスさせていただきます。そうしたことの蓄積が多数の合格者を出している理由の一つになっていると思います。
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●「速く正解する」を重視した指導
――光塩女子学院初等科には、受験者6名のうち4名の合格者を出していますが、ペーパー難関校対策にも力を入れているようですね。
宝田 ええ。11月から新年長クラスがスタートし、3月までは週1回の総合受験クラスをとっていただきますが、4月からは習熟度別クラスが加わります。夏までには、複数の指示を正確に聞き取り行動に移せるなど、かなりハイレベルになっています。ペーパー問題では、単に正解力が身に付くだけでなく、「速く正解する」を重視した指導になります。
ペーパー難関校の場合、難しい問題を解けるようになればいいと、とにかく枚数を増やそうとする親御さんもいますが、難問奇問は出ません。むしろ、「パッパッと答える」ことができるかどうかが合否を分けるポイントになります。全問とも答はわかっていても、時間切れで5問のうち3問しかできなかったというのであれば、致命的なマイナスになります。ですから、指示を正確に聞き取るとか、回答のスピードアップがペーパー難関校対策のポイントになります。
――「速く正解する」には、どんなコツがありますか?
宝田 たとえば、1分間、目をつぶらせて、1分間がとれくらいの時間かを身体で覚えさせることもしていますが、やはり、授業のつど、意識的に速く回答するという練習を重ねることしかないと思います。習熟度別クラスでは、できる子にはさらに難しい課題を与えて、どんどん先に進ませることもしていますが、その一方、指示が正確に聞き取れないような子については、じっくり基本を固める指導をします。1人ひとりの状態に応じた指導ができていることが、ペーパー難関校ほか、行動観察を重視する学校などに合格実績を出している理由だと思っています。
●年長最後の授業に親への感謝を教える
――ところで、こちらでは、年長の最後の授業のときに、子どもに感謝する心を教えているようですね。
宝田 ええ。私立にお子さんを通わせることができるご家庭というのは恵まれていると思います。私立を受験するしないにかかわらず、就学前の幼児期の教育に熱心なご両親もいます。そういうご家庭・親御さんのもとで育った子はたいへん幸せだと思います。世の中には勉強したくてもできない子どもがたくさんいます。
また、小学校受験というのは、試験をうけるのはお子さんですが、そこで問われていることはご両親のあり方です。どんな考えでお子さんを育ててきたのか、どんな大人になってほしいのか、そのために6歳までどんなことに気をつけて育ててきたのか、その部分が問われています。とくにお母さんの負担はとても大きいものになります。
ですから、年長最後の授業のときは、みんなはお父さんお母さんが一生懸命みんなのことを考えてくれて、お勉強ができる。みんなはすごく恵まれていて、幸せな子どもであることをよくわかってほしい。みんなはまだ小さくて1人では何もできない。家族に支えられているから生きていけるんだよ。だから、おうちに帰ったら、お父さんお母さん、たくさんお勉強させてくれてありがとうって言おうねと‥‥。6歳の子どもがどこまで理解できるかはわかりませんが、このことは私なりに精一杯伝えていきたいと思っています。精神年齢の高い女の子の中には、涙ぐみながらうなずいてくれる子もいます。
――ありがとうございました。
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