親はじっと見守るだけ、必要なときに、
わずかに手を添えるだけでいいのです

二子玉川翠会・さくら会代表 
関原多枝子さん



二子玉川翠会・さくら会
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●過保護・過干渉は自分ではわからない

──こちらの入室案内の中に、「大人はじっと見守るだけ、わずかに手を添えるだけでいい」という一文がありました。いい言葉ですね。
関原 幼児期というのは、毎日が新しいことの発見の連続です。面白そうなことを見つけたときとか、自分ひとりで何かができたときは、もう、目をキラキラさせて、口を大きく開けて、今にも叫び出しそうです(笑)。

そんなとき、お母さんが「わぁ、すごい!」「よくできたね!」と驚いたりほめてあげたら、子どもにとって最高にうれしいことです。もっとお母さんにほめてもらおう、もっと驚かしてあげようと一生懸命になります。こうして幼児期の知能は刺激され活性化するのだと思います。

ですから、コレをしなさい、アレをしなさいとあまり神経質になる必要はないのです。種を蒔くというか、ヒントをあげるだけでいいのです。後は、「見守る」そして「待つ」。必要であれば、そっと手を添える。それが幼児教育の基本だと思うんです。

──簡単なようだけれど、むずかしい注文ですね。
関原 そうですねえ。一番むずかしいことですね。昔のお母さんは子どもがたくさんいたから、手をかける余裕がなかった。結果として、見守るしかなかったのだと思います。最近は1人っ子が多いから、どうしてもお母様の目が行き届き過ぎてしまう(笑)。端から見ると、過保護・過干渉になっているなとよくわかるんですが、ご自分のこととなるとわかりにくいのです。

──ビジネスの世界でも、東大や慶応を出て、若いうちに事業を立ち上げ成功した経営者に聞きますと、子どもの頃は、ほったらかしだったと言います。
関原 ええ、ええ。
──過保護になりやすいタイプというのはありますか。
関原 一般的な傾向として、ご自分の生き方を持っていないお母様の場合、どうしても過保護・過干渉になりやすいですね。何か熱中できる趣味とかお仕事をもっていれば、そんなに子どもに干渉することはないと思うんです。

──司法試験に挑戦するというお母さんがいて、わが子の小学校受験に際しては「あまり手をかけられなかった」と言っていました。
関原 それがよかったのだと思いますよ(笑)。実は、この教室では、いつもはお母様方に授業を参観していただくのですが、1か月に1度、それも2時間程度、お子さんのことはいっとき忘れてご自分のために時間を使ってほしいという日をつくっています。お子さんは私どもに預けて、その間、ショッピングでもいいし、カルチャーセンターでもいい。とにかく、お子さんから離れてほっとする時間をつくってくださいとお願いしています。ご自分にゆとりがないから、子どもに関心が向いてしまう場合も少なくないのです。

──みなさん、その時間をどう活用していますか。
関原 ちょっとしたお買い物とか、溜まっていた家事を片づけるといったことに使っているようですが、春休みや、夏休みの時は、お子さんを1日お預かりします。このときは、お芝居に行くとかお友達とパーティを楽しんだりするようです。ママはパパとデートだから、あなたも教室で楽しんで来てねと言って、お子さんを教室に送り出す(笑)。

●子離れができていない親は受験には不利

──子どもとの距離のとり方がむずかしいんでしょうね。
関原 ええ。お母様方には、ときどきお子さんから距離をおいてくださいと申し上げています。頭の中ではわかっていただけるのですが、さて、ご自分の場合、母と子の“車間距離”は適当かとなるとわかりにくいようです。

私どもでは、お子さんを1歳半からお預かりするケースが多いのですが、この年齢ではお母さんとちょっとでも離れると泣き出すお子さんが少なくありません。お母様も不安でしょうがない。お子さんが泣いても我慢してくださいと申し上げているんですが、窓ガラス越しにわが子の授業を見て涙をぽろぽろ流すお母様もいます。親の愛情とはすごいものだと感じます。

この母親の気持ちを私たち保育者は忘れてはいけないと思っていますが、親離れができないお子さんというのは、どうしても受験には不利です。ついでに申し上げると、子離れができていない親というのは、学校に対する注文が多いと思われて敬遠されることもあるんです(笑)。

──親離れ子離れができているかどうか、短時間の面接でわかるんですか。
関原 そりゃ、もう毎年何百組もの面接をしていますから、お話の内容だけでなく、ちょっとしたしぐさでわかると思いますよ。その辺はプロですから(笑)。

子離れという問題は、お子さんをどう育てたいかということと密接に関係するテーマですから、ご両親でよく考えていただきたいのです。お子さんを受験させるご両親というのは、学歴の高い方が多いのですが、他人と自分は違うということがわかるのがなかなか難しいのです。

それに、受験に関しては、お母様の意向が強いのが一般的ですが、母性が強く出るといろいろと問題があります。また、核家族であることや友達付き合いが狭いなどから、どうしてもお母様の視野が狭くなります。そういう意味では、幼児教室といっていますが、“母親教室”の意味合いが大きいのが現実です。

●今の時代、父親は仕事優先でいい

──父親のあり方については、どうお考えですか。
関原 お母様とお父様はいいコンビであってほしいと思いますね。
──役割分担ですか。
関原 ええ。お母様は24時間お子さんと接しているから、どうしても細々としたことに口を出さざるを得ないし、小言も多くなる。きびしいこともおっしゃる。ですから、その場合は、お父様はニコニコしていてほしい。叱ったり、きびしいことをいわなければならないときは、どちらか一方にする。私の言うことを聞かないから、あなたから叱って下さいという場合もありますが、それはあまり感心しません(笑)。

一般的に、お父様は大きな視点からアドバイスをして、お母様は日常の細かい心遣いをするというケースが多いのですが、その逆でもいいのです。もしお父様が細かいことにいろいろと気づくのだったら、お母様は見て見ぬふりをするという関係でいいのです。父親はこうあるべきだとか母親はこうでなければいけないということはありません。

私どもの教室でも、とても教育熱心なお父様がいらっしゃるんですが、おうちで復習してくださいと申し上げたら、お父様が張り切って、すごいらしいんですよ(笑)。でも、勉強が終わると、最後にきゅっと抱っこして、よく頑張ったねってほめてあげるらしいのです。その間、お母様はただ見てるだけです(笑)。

──今の時代、父親が仕事よりもわが子の受験を優先するというのはむずかしいでしょうね。
関原 ええ。土日にかかる仕事は断ったほうがいいか、残業はしないほうがいいか、夜のつき合いは避けたほうがいいか、よくご相談いただくのですが、お仕事を優先させてくださいと申し上げています。

絶対に潰れないと思っていた銀行や証券会社、保険会社が潰れているし、リストラがどんどん進んでいますから、学校側にしても、仕事大事というお父様を評価するのではないでしょうか。難しいのは、試験当日に仕事が入った場合です。

──どうしたらいいんですか。
関原 やはり仕事を優先すべきだと思いますね。その代わり、これこれの事情でどうしても面接にはお伺いできなくなったけれど、何とか御校に入学させてほしいという切々たるお気持ちを手紙にお書きになったらいかがですかと申し上げています。お母様には、そのお手紙を面接官に渡していただきます。たいてい、その場でお読みいただけます。そしてお母様がきちんと対応すれば、お父様が面接に出席できなかったとしても心配はいりません。

現に、お母様お1人の面接で合格なさっているケースはあります。もし、おじいさまがいらっしゃるのなら、代わりにおじいさまに一緒に行っていただくことも考えていいと思います。そうまでして入学させたいという熱意は学校側に伝わりますから。

──それにしても、「見守る」「待つ」というのは、我慢が必要ですね (笑)。
関原 ええ。過保護とか過干渉というのは、親にとってはラクなんですよ。子どものためと思って口を出し手を出すのですから、ある意味で、母親としての義務というか、やるべきことはやっているという充実感があります。しかし、見守るということは、我慢することですから、ストレスが溜まります(笑)。

それに、見守るというのは、けっこうむずかしいことなんです。私どもでも新任の若い先生の場合、子どもと一緒になって遊んでしまうことが少なくないのですが、見守ることが私たちの仕事ですと注意しています。というのも、子どもが何かに興味を示したり、夢中になったら、子どもからすっと離れるようにさせています。教師が一緒に遊んでしまうのは避けたほうがいいのです。これはお母様の立場でも同じです。

ですから、子どもとの関わり方の中でむずかしいのは、引き際ですね。何かができてからではなくて、できる途中、つまりできそうになったら、すっと離れて見守ってあげる。それが子どもの才能を引き出すコツと思います。
――ありがとうございました。

   


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