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「廊下で学校の先生らしい男性とすれ違ったときのことです。一緒にいた娘が、その先生にコンニチハと軽く会釈しました。その先生はにっこり笑って娘に挨拶を返してくれましたが、その先生が校長先生であることは面接のときに知りました」
これはお子さんが湘南白百合に合格したお母さんの話です。6歳の子どもが大人とすれ違ったときに頭を下げて挨拶ができるというのは、とても珍しいケースでしょう。名前を呼ばれたら、元気よく返事をする、先生とお話をするときは「です。ます」の丁寧語を使うぐらいのことは教えられていると思いますが、大人とすれ違うときや、人の前を通り過ぎるときは軽く会釈をするというマナーは、大人でもなかなかできないことです。たぶん、その校長先生は感動したと思います。
学校の中で先生とすれ違うときは会釈をしなさいと教えていたのかとお母さんに聞いたら、そこまでは教えていませんと言います。幼稚園でそうするように教えられていたのかもしれませんが、「娘のこうした振る舞いを見たのは初めてです。娘を見直しました」と笑っていました。
別の例です。両親だけの面接の日に、間違えて、子どもを連れて行ってしまったママのケースです。子どもを先生に預かってもらって面接を受け、子どもを引き取りに行ったとき、このママは感動的なシーンを目撃します。椅子に座って絵本を読んでいたお子さんは、ママの姿を見たら、傍らの先生に「ありがとうございました」とお礼を言い、そして椅子をすっと元に戻したのです。一瞬、「うちの子?」と思ったそうです。近所の顔見知りのママから話し掛けられても、「うん」とかわからないときは首を振るだけだったわが子が、「ありがとうございます」と言えただけでなく、座っていた椅子を戻したのです。
学校の門を出て、まっ先に聞いたのは、「そんなこと、どこで覚えたの?」でした。答えは「保育園ではいつもそうしているよ」。「でも、おうちではしたことがないじゃないの」「よそではそうするよ」。わが子のことは何でもわかっているつもりだったママはちょっとショックだったようです。
もう一つの例です。幼児教室が太鼓判を押した優秀な子どもが受験に失敗しました。子どもからはペーパーテストの問題や試験官との一問一答のあらましを、お母さんからは面接の様子を聞きました。何も問題はありません。なぜ不合格になったのかわかりません。致命的なミスがあったに違いないと受験した子どもにさらに聞いてはじめてわかりました。紙コップをどれくらい積み上げることができるかという問題が出て、みんなで子どもの背丈ぐらい積み上がったところで、その子は紙コップの山にケリを入れたのです。
積み木の山があれば突き崩したくなる、アリの行列を見れば踏んづけたくなる‥‥これは幼児の本能みたいなものでしょう。誰でもそうしたくてウズウズしているのですが、ここは試験の場だからそうしてはいけないという自制心があります。私立を受験するからには、この自制心が当然身に付いていなければなりません。
いくつか例を紹介しましたが、何を言いたいかというと、受験準備をスタートする前に、むろん途中でもそうあってほしいのですが、わが子の精神年齢はどうかを注意深く観察してほしいのです。レストランで走り回ったり、叱れば床にひっくり返ってゴネるのは、しつけというよりも精神年齢が低いのです。幼児性が抜け切れてないのです。
ペーパー問題はよくできるし、はじめてのお友達ともすぐ仲良くできるし協調性もある、発表力もある、先生から質問されれば丁寧語はきちんと使える、正確は明るい‥‥最近、こういう典型的な「お受験っ子」が増えているらしいのですが、「幼児性が抜けていない」という問題があることも知っておいてください。(この項つづく)
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