はじめての幼稚園・小学校受験

第9回●志望理由が見つからない理由は準備不足

*第9回はフリーページです


来年受験を予定しているご両親に対して、幼児教室を探したり、問題集を買ったりする前に、「志望理由を書く」ということをおすすめしましたが、なぜそんなことをする必要があるのかというお問い合わせをいただいています。

来年の秋に受験される方の場合、志望校の絞り込みは来年5月以降だと思います。それ以前に、いちおうの心づもりをしていても、学校説明会に参加したり、幼児教室の先生の意見を聞いて、最終的に複数の志望校を決めるのは8月に入ってからというケースも少なくないようです。しかも願書の提出は9月〜10月です。受験する1年前から、願書の志望理由を考える必要性が感じられないというのもムリからぬところです。ましてや、作文の練習など‥‥というお気持ちもわかります。

実を申し上げると、志望理由を書くということが受験準備に大いに役立つと思いついたのは、私自身、つい最近のことです。というのは、このホームページで願書の添削をさせていただいたところ、もう少し早い段階で文案を拝見できていれば‥‥というケースがかなり多かったのです。

典型的なケースは、「御校の○○に共感して」「学校説明会での校長先生のお話に‥‥」など、ワンパターンの志望理由が多く、「私どもは子どもをこう育ててきた」という肝心な部分がすっぽり抜けているか、曖昧なのです。志望理由が「曖昧」になる理由の1つは、やはりブランド志向です。「人気校だから志望した」「中学受験に有利だから」「通学に便利だから」というのが、みなさん方の本音のようです。この場合、志望校の教育方針はわかっていても、「わが家の教育方針」との接点がありませんから曖昧にならざるを得ません。

もう1つは、「わが家の教育方針のウリ」が何かがわかっていないケースが多いのです。志望校の教育方針とわが家の教育方針のすり合わせにばかり一生懸命になってしまい、学校側が「どんな子・どんな家族を受け入れたいのか」という視点からのチェックが甘いのです。ご両親には、この子(この家族)を合格させたら、学校側にどんなプラスがあるのかという発想がないのです。

あるお父さんから送られてきた志望理由は添削の必要がないほどよく書き込まれていたのですが、志望校はかなりの人気校でしたから、お父さん自身、これでいいのかと迷っていました。「ちょっと平凡かな」と感じていたようです。電話でいろいろとお聞きしてみると、ご自身は曾祖父の時代から続いているその地域ではよく知られている会社を受け継いでいました。

なぜ、そのことを願書に盛り込むとか、匂わせるといういことをしなかったのですかとお伺いしました。あなたのお子さんとふつうの家庭のお子さんのどちらか1人を選ぶという場合、あなたが校長先生だったら‥‥学校側の立場に立つとは、そういうことです。もっとも、このお父さんの場合、そうしたほうがいいとわかっていても、どう志望理由に結びつけたらいいか、それを文字や言葉に表現するのが慣れていなかったのです。

前置きが長くなりました。なぜ、学校側に「この子・この家族がほしい」と思わせるような志望理由がみつからないのかというと、答は1つです。要するに、準備不足です。わが子はこう育ってほしい、そのためにわが子が生まれたときから、父親として母親としていろいろなことをしてきたにもかかわらず、言葉として、あるいは文字として表現できないだけのことです。時間をかけてじっくり考えたり、ご両親が話し合ってみれば、「この子・この家族がほしい」と思えるような何かが見つかるのです。「何もない」のではなく、「気づかない」だけです。

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