短期集中連載●17年度入試直前対策

面接対策・プロのアドバイス その2(2004.10.1掲載)

何かの理由でお父様が立ち往生しているなら、お母様が質問に答えるべきでしょう。「夫は緊張しているようですので、私がお答えします」と言っても、でしゃばりな奥さんだと思う面接官はいないと思います

尾形圭子さん略歴

ファインコミュニケーションズ代表。企業向けの社員教育、接客マナー、電話応対研修などを手がけるほか、幼児期における家庭環境のあり方、親と子のコミュニケーションの重要性などを講演・執筆活動を通して提言。ボイストレーニングや話し方、歩き方、表現法などの指導例も多数。連絡先045-714-2505


●「一言付け加えたいのですが‥‥」は1分以内で

――「話し方」のポイントは何でしょうか。

尾形 「○○です」「よろしくお願いします」の挨拶を明るく元気良くする、これが基本です。普段よりもちょっと声のトーンをあげるのがコツです。面接官とのやりとりに入ったら、普通の状態で話しても良いのですが、挨拶のときは「元気に」というのが鉄則です。お母様の場合も、明るく、さわやかに、にこやかに‥‥を心がけてください。早口はいけません。言葉のスピードは1分間で300〜500文字ベースがいいと言われています。早すぎると、家の中では口やかましいお母さんというイメージを与えてしまいます。話しているときの早さは強弱をつけたほうがいいですね。ここを強調したいと思えば、そこをゆっくり話して、流しても良いところは早くする。そのほうが印象に残ります。ゆっくりな部分で300文字、早い部分で500文字ペースと考えていただければいいですね。そして、ポイントを整理して面接官に分かりやすく伝えることも忘れないでください。

――言いたいことを言えなかったときはどうしたらいいですか。

尾形 「一言付け加えたいのですが‥‥」と言ってから、発言を求めてください。その必要はありませんと拒否されることはほとんどないはずです。むしろ、そのほうが熱心さが相手に伝わります。その場合の注意点は1分以内に話すことです。それ以上は長いと感じてしまい印象に残りません。以下は、あるお父さんの実際例です。

 「一言、付け加えさせてください」
 また、自慢話かとうんざりしているときに、
 「阪神大震災の直後、この子を現地に連れて行きました」
 こういう切り出し方ですと、相手は、いつもと違うとか、いったい何事かと関心をもちます。
 「ぺしゃんこに潰れた家、傾いたビル、焼けただれた立木、裂けた道路などを見せました。家の下敷きになったり、火事でたくさんの人が死んだことも話しました。子どもは黙って私の手を握りしめていました。6歳の子どもにそんな悲惨な場面を見せる必要はないという意見もあると思いますが、私は、この子が6歳ではなく、4歳であったとしても3歳であったとしても見せていたと思います。それが男親の役割だと思っています」

抽象的なことは何も言っていわずに、「こんなことがあった」とだけしか話していませんが、この父親の子育てに対する考え方は十分に伝わってきます。

●「楽しかった」「嬉しかった」など、小児的な感情表現は避ける

尾形 面接では多くの学校でお子さんの長所短所を質問しますが、このときも、「とても明るい子です」「何事にも積極的に取り組む子です」「思いやりがあります」という抽象的な話では説得力がありません。こういう話し方はいけないというのではありません。面接以外の場でしたら、「この子は思いやりのある子です」というだけで、相手はいろいろと想像しますから、わざわざ具体例を持ち出す必要はありません。むしろ、言えば嫌みになります。

小学校受験の面接の場合、エピソードを添えたほうがいいというのは、そうしなければ差がつけられないためです。みんなが判を押したような答え方をすれば、面接官だってうんざりしてきます。だから、エピソードを添えるということは、強く印象づ けるため、差をつけるためとお考えください。みなさん、考えることは同じでしょうから、平凡なエピソードは効果がうすいということも承知しておいてください。どんなエピソードなら相手の印象に残るか、その辺はお父さんの腕しだいです。エピソー ドも1分以内にまとめてください。

とくに注意していただきたいことは、お母様方に多いのが、ダラダラと話すパターンです。1分以内に話す練習をしたらいいと思います。それを身につけるには練習しかありません。ご主人を相手に練習するとか、ご主人とのやりとりを録音して後で聞き直してください。何回か練習すれば、1分という時間がどれくらいなのか、感覚としてつかめるようになります。ポイントを整理して「結論→序論→本論(エピソード)→再度結論」と話の構成ができるように練習してみましょう。非常にわかりやすく印象に残る内容になります。

それから、最近の若い人の話し言葉で気になるのは「小児的な感情表現」です。面接の場で「チョーうれしいです!」などという言葉が飛び出ることはないでしょうが、ボキャブラリー不足は不利です。急場しのぎの対策はありませんが、本や雑誌を読んでいて、気に入った言葉や表現法があったら傍線を引くだけでなく、書き留めておくといいでしょう。「書く」ことによって記憶に残ります。

●父親が答えられなかったら助けてあげるのは当たり前

――父親の準備不足を不安がるお母さんが多いのですが‥‥。

尾形 面接でお父様が話しているときに、口出しをするのは避けたほうがいいと思います。お父様が答えているときは、口出しをしない、付け加えないは原則です。うなづくくらいでいいと思います。そのほうが好印象を与えます。ただ、お父様が緊張してシドロモドロになっているような場合は助け船を出すべきだと思います。面接は家族にとってはとても大事な場面です。何かの理由でお父様が立ち往生しているなら、お母様が質問に答えるべきでしょう。「緊張しているようですので、私がお答えします」と言って、でしゃばりな奥さんだと思う面接官はいないと思います。

それから、ちょっと盲点になっているのが、お父様のセンスです。ご自分の身なりには無頓着なお父様が少なくありません。さきほど申し上げたように、第一印象をよくするには、やはりお父様の服装のセンスに気を配ったほうがいいと思います。かりに、ご主人がやぼったい印象を与えるのであれば、専門店などのスタイリストにコーディネイトしてもらってもいいと思います。ビジネスマンのお父様であれば、キレ者、ヤリ手のビジネスマンみたいねと盛り上げてあげることも大切です。そんな些細なことでも第一印象は変わるものです。

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