短期集中連載●17年度入試直前対策

面接対策・プロのアドバイス その4(2004.10.掲載)


尾形圭子さん略歴

ファインコミュニケーションズ代表。企業向けの社員教育、接客マナー、電話応対研修などを手がけるほか、幼児期における家庭環境のあり方、親と子のコミュニケーションの重要性などを講演・執筆活動を通して提言。ボイストレーニングや話し方、歩き方、表現法などの指導例も多数。連絡先045-714-2505

●若い人に共通する「困った話し方」の修正法

――若いお母さん方に共通する話し方の難点というのはありますか、例えば早口だとか‥‥。
尾形 それに井戸端会議的な話し方とか(笑)。男性は仕事で要領よく話をする訓練を自然に身につけていますが、専業主婦の場合、改まった場で話をするという機会が少ないですから、どうしてもまとまりのない話し方になってしまうようです。
――どう直したらいいですか。
尾形 面接の場では1分以上話しても効果がありません。どんなに大切なことを話したつもりでも、面接官は早く終わってほしいとイライラしながら聞いています(笑)。1分という時間の中で、何を、どう話すか、ある程度ポイントを整理した上で話をすることが必要です。自分は何を言いたいのか、何を伝えたいのか、それを最初にポンともってくる。たとえば、子どもの長所短所を聞かれた場合なら、長所はこれこれです、短所はこうですと、伝えたいことをまず明確にする。結論を先に言う。そして、特徴的なエピソードなどを話します。最後に、うちの子はこうこうこうですと念押しをする。最初と最後に別の表現で同じ結論を持ってくると、つよく相手に印象づけることができます。ただ、1分といっても、これを一気にしゃっべてしまうと単調になりますので、結論を言って、次の話に入る前に一呼吸入れるといいと思います。
――間の取り方というのは、どういう練習方法をすればいいですか。
尾形 そんなにむずかしく考える必要はありません。「何々です」と言ったら、ふっと一呼吸おけばいいんです。それが自分の中でくせになると自然に間が取れるようになります。
――語尾を上げて話す人がいますが、ちょっと耳障りですね。
尾形 何か勘違いしているんでしょうね。かわいらしさのアピールだとか(笑)。これはすぐ直したほうがいいですね。それから公式の場では「っていうか」という話し方も避けたほうがいいでしょう。語尾を曖昧にするのは、自己主張がちゃんとできない、自分の意見をはっきり言うと相手に嫌われるかもしれないと受け取られます。

●「への字」型の口元は簡単に修正できる

――ゼスチャーがオーバーというのは避けたほうがいいですか?
尾形 ええ。面接官によっては気に障る人もいます。海外の生活が長いとか、ご主人が外国人の場合、どうしてもゼスチャーが大袈裟になりますが、やはり控えめがいいと思います。夫唱婦随がまかり通っている世界ですから(笑)。それから、日本人は相手の目を見て話すのは失礼と思っているかもしれませんが、相手の目をきちんと見て話さないと失礼に当たります。ただ、睨み付けるように凝視するのではなく、ときどきは眉間の所を見たり、首もとを見たりして、視線をズラす必要があります。ただ、これは相手次第という面もあります。しっかりとこちらを見て話をしてくるタイプの人であれば、こちらも相手の視線をしっかりと受け止める必要があります。相手が伏せ目がちだったら、こちらもそれに合わせた対応が必要ですね。
 それから、お母様方に意識して気を付けていただきたいのは口元です。30代後半になると、どうしても口元が下がってきます。本人は気がつかなくても、口元が「への字」になっています。いつもニコニコしている方ならいいのですが、注意が必要です。いつもお家では怒ってばかりいるのかと誤解されます(笑)。夫婦仲が悪いのか、神経質で苦労性なのか、どうしてもそういう印象になります。
――顔の造作の問題ですから、直すのはむずかしいでしょうね。
尾形 いえ、口元に力を入れて口の両端をちょっと上に上げるだけですから簡単です。ふだん、ここを使ってない人は口元の筋肉も衰えてますから、なかなかあがりません。ふだんから口元を手で押し上げるようにしたらいいと思います。鏡の前でこれをやってください。口元にちょっと力をいれて、両端が上にあがるとどういう表情になるかがわかります。
――その程度のことで柔和な印象を与えることができますか?
尾形 ええ。不思議なことに、そうやって口角をあげる練習をすると、表情が穏やかになり、柔和な感じになります。そうすると自然と気持ちも穏やかになります。ですから、ふだんから、いやなことがあったときは逆に笑顔をつくって気持ちを落ち着かせるようにするといいですね。
――第一印象は気むずかしいという印象があっても、うちとけてみるとこんなに明るい人だったというケースが少なくないですね。どうしたらいいですか。
尾形 気むずかしく見られるのは何故なのか、服装だったり、表情だったり、声の出し方、話し方、全体でそういうイメージになっているので、全体を直していくしかないですね。親しい友人とか実家のご両親などに、自分がどう見られているかの印象を聞いたほうがいいですね。
――気むずかしいイメージを消す方法はありますか(笑)。
尾形 やはり先ほどの口角をあげる練習をしたらいいと思います。女性の場合、お化粧で簡単にイメージを変えることができます。ただ気を付けていただきたいのは、眉間のしわです。ここにしわのある方はやはり気むずかしい印象になります。でも、眉間のしわはマッサージで取れます。水分をよく摂取してマッサージをして、あとは笑顔を心がければ自然に消えます。お子さんを叱ったり、ご主人と喧嘩したときはご自分も知らないうちにそういう表情になっています。それが度重なるうちにしっかりと刻まれてしまうものです。笑いじわはいいですけど、縦のしわは気をつけてください。神経質そうに見えますから。

●「あの〜」「え〜」「う〜」など「あ行」は避ける

――自分の話に自分でうなずいてしまう人もいますね。
尾形 癖ですね、それは。やはり直したほうがいいですね。やっかいなのは、本人は無意識でそうしているケースが多いということです。しかも、誰も注意してくれない。とにかく自分の話し方をテープにとってみるのが一番いいです。それから「あの」という言葉がとても多い人もいます。「あのー」「えー」「うー」などを連発してしまうと、やはり聞きにくいものです。話をするときに「あ行」はできるだけ避けたほうがいいと思います。
――些細なことですが、面接官からお世辞を言われたときの注意点はありますか(笑)。
尾形 ずいぶんお若く見えますねといわれて、「えー、そんなあ。そんなことないですう」ではなくて、「ありがとうございます」くらいでさっとかわしたほうがいいですね。
――最近は小学校の面接官もみんな親切ですから、緊張していると、気を利かしたつもりでお世辞をいうときもあります。ひっかけで言っているのかもしれないですね。
尾形 面接官の言葉というのは、全部ちゃんとした意図があると思ったほうがいいですね。緊張をほぐして、きちんと自分の意見を言ってほしいという意図で、これをアイスブレークというんですが、お世辞を言ってくる場合もあります。お子さんにも、朝何を食べてきたの? とか聞いたりします。それでも、そのときの反応はちゃんと見ています。油断しないほうがいいですね。小学校受験の質問にはないと思いますが、「どうしてそう思ったのですか」「ああなたの考え方はどうなんですか」というふうにどんどん詰めていく質問があります。答に窮したときにどんな反応を示すかをしりたいためです。ときには意識的に相手を怒らせるような質問をすることもあります。なぜそういう質問をするのかというと、感情面での反応の仕方を見るためです。小学校受験ではそこまで厳しい津試問の仕方はしないでしょうけれど、地を見たいと思うときは、「本当にそうなんですか」とか「それはどういう意味ですか」と追及してくる場合もあります。そういうときは、必ず意図があるんだなと思って、深呼吸をしてちゃんと答えていただきたいですね。
――気が動転した場合は、どうしたらいいですか。
尾形 いったん言葉として口から出てしまった場合は、取り消しも修正もできないと思ったほうがいいですね。その場合は、まとまりがなくて申し訳ありませんとか、ちょっと気が動転して勘違いがありましたと素直に答えるしかありません。ですから、事前の準備が大切になってくるのです。小学校受験であろうと就職試験であろうと、面接の場は、やり直しができないと思ったほうがいいですね。
――ありがとうございました。