◆小学校受験・面接対策◆

どう答えたらいいですか?

めぇでる教育研究所所長
藤本 紀元さん

お子さんに模範解答を教え込むのは、
決していいことではありません

──大きくなったら何になりたいかと聞かれて、「仮面ライダーになりたい」と答えさせてはいけませんか?
藤本 お子さんが「仮面ライダーになりたい」「お猿さんになりたい」と答えた場合、先生方は、おそらく「その理由」を聞くと思います。妥当性があれば、仮面ライダーでもお猿さんでもいっこうに差し支えありません。自分の考えが言えることが大切です。「仮面ライダーのように強くなりたい」と言えれば、それで十分ですし、「お猿さんのように木登りが上手になりたい」と言えれば、子どもらしくていいのではないでしょうか。

──どうしてこの学校に入りたいかと聞かれたときは、どう答えさせたらいいでしょうか。
藤本 お母さんの出身校であれば、「お母さんに言われたから」で問題ないでしょう。女の子は、お母さんのようになりたいと思っているはずですから、受験準備も頑張ると思います。出身校でない場合は、お子さんにいかにして挑戦する意欲を持たせるか、小学校の受験でもっとも難しいところです。お子さんが嫌がるような受験準備をしていると、「なぜ、私だけが勉強するの?」といった気持ちになり、近所の学校へ行きたいとなりがちです。お子さんの口を閉ざすことは難しいものです。

──他の学校は受験しますかと聞かれたとき、正直に「3つ受けます」と答えさせていいですか。
藤本 「言ってはいけない」といわれていても、子どもは嘘をつけません。ましてや、ミッション系の学校を受験するのでは、学校の教育方針に違反します。「受けます」ということは、子供も知っていることでしょう。何校受験すると教えること自体、異常です。親が聞かれた場合は、「御校の試験で緊張しないために受験しました」といえますが、子供には無理でしょう。受験する学校の数まで教えるのは酷だと思います。

──この学校へ入るために、何かお稽古をしましたかと聞かれたとき、どう答えさせたらいいでしょうか。本当のことを言わせてもいいですか
藤本 「言っては駄目」と教えられて困るのはお子さんです。以前、「お母さんから言ってはいけないといわれている」と言ったきりうつむいてしまい、話が出来なくなった例がありました。
大人には嘘も方便となんでもないことでも、子供にとっては一大事であることを、もっと真剣に考えて欲しいものです。傷つくのは、いつも子供です。塾へ行っているといっても合格しますし、不合格にもなります。問題は、子供が楽しく通っているかどうかでしょう。「お勉強は楽しいですか」と聞かれて、お子さんがうつむいたり、返事に戸惑うようでは心配です。

なお、最初の「大きくなったら何になりたいですか」という質問は、よく聞かれているようですが、それ以外は、どうでしょうか。学校側が好んでする質問とは思えませんが、もし、これらの質問が出たときは、学校側が保護者に何か違和感を持った場合、たとえば、ご両親の言っていることとお子さんの言動に矛盾があるといったときです。

それから、お子さんに、大人の考えた模範解答なるものを教え込むのは、決していいことではありません。メッキははげるものです。慶應幼稚舎が面接をやめたのも、「傾向と対策」的な発想に基づく模範解答なるものを教え込まれていると判断したためであり、桐朋学園小学校が面接をしないのは、「子供を2日間預かれば、ご家庭の育児の方針がわかるから」といっています。「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、受験準備、事足れりと考えるのは間違いであることに気づいてほしい」と、これは20年前に、あるミッション系の学校説明会で聞いた話です。小学校の受験は、泥縄式では対処できません。


──親の面接で志望理由を聞かれたとき‥‥
藤本 小学校の受験は、「はじめにご家庭の育児の姿勢がありき」であるべきでしょう。ご家庭と学校の教育に対する考え方が限りなく近ければいいわけです。たとえば、慶應幼稚舎の場合、新入生と「嘘をつかない。お父さん、お母さんとの約束を守る。自分でできることは自分でする」といった3つの約束をします。この3つの約束をご家庭できちんと実行していれば、幼稚舎とご家庭の教育方針が一致しているわけです。「独立自尊云々」といっても、育児に取り入れていなければ、志望理由にはならないということです。

──この学校を受験することについて、お子様にどのように説明されたかと聞かれたとき‥‥
藤本 小学校の受験は、ご両親が子どものためによかれと考え始めたことであり、合格する保証はないのですから、「だめだった!」といった印象だけは残したくないものです。私立小学校からは来なくても、公立校からは必ず招待状が来るのです。もっとも「どんなことができるか、学校の先生に見てもらうのよ」ぐらいで済めばいいのですが、ほとんどの子供が、それなりの準備して受験しますから、そうもいかないでしょう。不合格の場合のショックをできるだけ与えないように、ご両親の心構えこそ、大切なことではないでしょうか。「ママが、面接で失敗したからよ」といってショックを与えず、中学受験で見事に合格させたお母さんもいます。

──お子様の長所と短所をお聞かせくださいと聞かれたとき‥‥
藤本 長所は、ご両親の育児がうまくいっているところであり、短所は、うまくいかなかったところと考えるとわかりやすいと思います。あるいは、遺伝もあるかもしれません。「こういった短所があるから不合格」とは考えにくいのですが、短所は、どのように直していくか、簡単に説明すべきでしょう。「飽きっぽい」「落ち着きがない」などと言い切ってしまう保護者はいないと思いますが、言葉には、十分の配慮が必要です。忘れてならないことは、お子さんが初対面の人と話をするとき、どういった態度をとるかです。そこを短所ととらえ、きちんと対応できる保護者であってほしいと思います。

──お子様の将来像と接し方について聞かれたとき‥‥
藤本 受験する学校の教育方針が、お子さんの将来像にふさわしければいうことありません。たとえば、将来、思いやりのある子に育って欲しいと考えていたとします。東洋英和の教育方針は「敬神・奉仕」です。これは、人と共に生きる「共生」を意味します。相手を思いやる気持ちは過保護や過干渉の環境からは生まれません。「そうならない育児に徹し、ご縁がありましたら『敬神・奉仕』の精神を学ばせたいと思います」といった図式が出来上がれば、理想なのですが‥‥。

──ご家庭の教育方針を聞かれたとき‥‥
藤本 どんなときにほめ、叱るか、箇条書きにしてみましょう。それが、ご家庭の教育方針であるはずです。その日の気分しだいで叱ったり、ほめることは除外します。ご家庭の育児の方針と学校側の教育方針が限りなく近ければ学校選びは適切だといえます。反対に、接点が見つからない場合は、学校選びに不備がありますから再考が必要でしょう。

──保護者会への出席について聞かれたとき‥‥
藤本 専業主婦には、こういった質問はないでしょう。仕事を持っている場合、この質問はありがちです。学校の年間行事などは、あらかじめわかりますから、出席できますと明言しておきたいものです。小学校の教育は、家庭と学校の二人三脚で行われるものです。保護者会は、母親の教育の場です。親子で共に学んでいくのが私学の教育方針でもありますから、出席できないのでは、学校の方針と相容れないことになります。学校にお任せというわけにはいかないでしょう。学校側の心配な点は、きちんと正しておくべきでしょう。

──近くの公立の小学校を選ばなかった理由を聞かれたとき‥‥
藤本 平成14年度から新しい指導要領が実施され、私立校の特徴であった週五日制、英語教育も公立校でも行われていますし、少人数制にいたっては都心の小学校に太刀打ちできない状態です。しかし、公立校では絶対にできないことがあります。それは宗教教育です。そして、公立校になくて私立校にあるのは、建学の精神です。それに賛成しているので受験したということで、公立校へ行かない理由になるはずです。「いじめがあるから」「校内暴力云々」は言うべきではありません。心ある先生方は心を痛めている問題ですから。

──父親の役割について聞かれたとき‥‥
藤本 一般的に言って、母親主導型の家庭は歓迎されません。特に、私学校では「堅実な家庭をつくるお父さん」「それを支える謙虚なお母さん」が歓迎されています。一家の大黒柱であるかどうかは、面接される先生方には、ちょっとしたしぐさや応対からわかるそうです。お母さんの心を支えるのはお父さんの協力です。

──仕事の内容について聞かれたとき‥‥
藤本 自営業やフリーランサーの場合など、学校側に仕事の内容がわからない場合があるようです。先生方がわかるように,簡単な説明が必要です。営業年数や従業員数なども踏まえまとめておきましょう。職業で合否が決まるのではなく、経済的な基盤が確立しているかを知りたいわけです。
 入学時に200万円近いお金が必要ですから、ご主人だけの収入ではまかない切れない場合もあるのではないでしょうか。しかし、幼児には「シックスポケット」がありますから、若い方でも入学は可能だと思います。もし、シックスポケットがなく、先行き不安な会社に勤務しているようでは、受験どころではないはずです。破綻が噂されている会社に勤務していても受験されるのは、経済的な基盤(シックスポケット)が確立している証拠にもなるし、面接でも不安な雰囲気など現れないと思います。まして父親の出身校であれば、尊父の職業や家族構成がわかりますから心配ないでしょう。

 また、学校側が、経済的な基盤を心配する場合、寄付金などの質問があるかもしれません。その場合は、「募集要項に書かれてある以上のことをさせていただきます」とご主人が答え、その場で金額を言うのは賢明ではないと思います。学校名はいえませんが、説明会で、入学後に経済的に不安がある場合は、奨学金制度も利用できるとおっしゃっていました。

──宗教に対する考え方をお聞かせくださいと聞かれたとき‥‥
藤本 日本の場合、ミッション系の学校でも、信者でなくて結構、神官や僧侶のお子さんも入学しているといっています。だからといって、無関心でいいというわけではありません。価値観が多様化する中で、小さいときから、絶対的な価値観に基づいた教育を受けさせたいと考えるご両親が多くなっていることも事実でしょう。宗教教育に何を期待するか、これは大切な志望理由です。


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