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編集者日記



2007.1.4
各界の著名人に会うつど、幼児期の家庭環境はどうだったか、どんな子どもだったかを聞くようにしていますが、たいていは我が儘、強情、ひねくれ、粗暴、頑固など、おそよ小学校受験に合格するタイプとはほど遠いケースが大半です。弁護士をしている友人の場合、彼は幼なじみですが、庭木に縛り付けられたとか、何度も夕飯を抜かされたという話はしょっちゅう聞いていました。躾はゼロ、敬語とか丁寧語は使えないというより、そんな言葉遣いがあることは知らなかったと思います。小学校3年生くらいまでは野生児同然でした。中学生になると音楽と書道と家庭科の時間はいつも教室から逃げ出していました。高校生になったら、何がきっかけになったかしりませんが、猛烈に勉強をして有名大学に入り、在学中に司法試験に合格しました。現在は弁護士会の要職についています。彼からの年賀状を見ながら、人間には遅咲きのタイプがあるのだと痛感します。お子さんが将来、どんな生き方をするのか、長い目で見てあげてください。


2006.8.21


数検6級というと、小学校6年生のレベルですが、5歳のY君(幼稚園年長)が合格したというので、Y君のお父さんにお話を聞きました。数検6級のテストではこういう問題が出たそうです。

「計算技能検定」
62.1÷23=
6−5.05=
4.56÷1.9=
( )÷5+8=11
6×[( )+13]=120

「数理技能検定」
「ふみさんとあつしさんの組の学級文庫には、本が40冊あります。6月中にふみさんは学級文庫の本を4冊読みました。また、あつしさんが読んだ本の冊数は、学級文庫の15%にあたります。次の問いに答えなさい。
1 ふみさんは、6月中に学級文庫の本を何%読みましたか。
2 あつしさんは、6月中に学級文庫の本を何冊読みましたか。

「あきこさんはキャンプに行くのに、長さ18Bのろうそくを持っていきました。このろうそくに火をつけると、10分間に3Bずつ短くなっていきます。次の問いに答えなさい。
1 このろうそくに火をつけてから20分後の、ろうそくの長さは何Bになりますか。
2 このろうそくに火をつけてから燃え尽きるまでに、何分かかりますか。


小学校受験のように試験官が問題を読んで、いくつかの答の中から正解に○をつけるという試験ではありません。文字が読めて意味がわかって、しかも文字が書ける必要があります。試験終了後に検算したら、「計算技能検定」は30問中全問正解、「数理技能検定」は20問中19問正解だったようです。

いつごろから、どんな勉強をさせたのか、とても興味があります。Y君のお父さんへのインタビューは後日掲載します。ご期待ください。



2006.7.8


以前、ある心療内科医の話を単行本にまとめたことがあります。その医師によると、心療内科の治療を受ける子どもにはいくつかの共通点があるようです。氓ツは、両親が高学歴であること、2つは、経済的に恵まれた家庭であることです。といっても、恵まれた家庭の子どもは非行に走りやすいとか落ちこぼれになるケースが多いというのではなく、経済的な事情で心療内科の治療を受けられない子どものほうが圧倒的に多いのが現実です。

3つ目の共通点は「いい子」です。厳密にいうと、「いい子を演じている子ども」。幼児期から親の言うとおりにしてきた子どもの場合、小学校高学年から中学高校に進んでも、「いい子を演じ続ける」うちはいいのですが、成績が落ち込んだり、自分の生き方に疑問をもってくるようになると、自分をコントロールできない場合が少なくないというのです。

以前、ある幼児教室の模擬面接を見学したときのことです。姿勢はいいし、受け答えもしっかりしているし、面接官役の先生も何もいうことはありませんと太鼓判を押していました。その子が教室を退出したとたん、下駄箱を蹴飛ばして「チキショウ」とつぶやいたのです。たぶん、面接のときはこうしなさい、こう聞かれたらこう答えなさいとしっかり教えられていたと思いますが、いい子を演じさせられたことに腹が立ったのかもしれません。ご両親も幼児教室の先生も子どもが下駄箱を蹴飛ばしたことは知りませんし、そんなことをするとは思いもよらないと思います。実は、この光景を見てほっとしました。この子は嫌なことをさせられたことに対して、下駄箱を蹴飛ばすという形で怒りを爆発させたからです。ガス抜きをしたのです。

5歳6歳になれば、親の言うことを素直に聞かないこともあります。ウソも言うし、だって‥‥と言い訳・弁解もします。嫌なことは嫌と言うし、親の言うことに反発もします。不機嫌になるでしょうし、ふてくさた態度をとるかもしれません。父親に食ってかかる子もいます。親の見ていないところで弟や妹に八つ当たりをするかもしれません。あんなにいい子だったのに‥‥とわが子の変わりようにびっくりするかもしれません。でも、ガス抜きをしない(できない)子のほうが心配です。奈良高1男子による母子3人焼死事件。両親は医師、屈指の進学校に合格した優秀な子、剣道2段のスポーツマン‥‥この子はガス抜きをできなかったのかなと、ふと思いました。



2006.6.2


取材が終わって、テープレコーダの電源を切って‥‥その直後にいい話が飛び出すケースがあります。誰でも目の前でテープレコーダが回っていたり、メモをとられていると、記事にされては困ることをしゃべらないかと緊張するものです。取材が終わると、つい気が緩んで、実はね‥‥と本音が出ることもあります。

これと似たようなことが単行本のケースでもあります。「あとがき」を読むと、なるほど、こういう視点で書いたんだなとか、著者の人柄さえも想像できます。蔵書房刊の『小学校受験準備6か月 20万円で合格した!』は、著者の神田のぞみさんがブログで書き続けている「20万円で合格した!『お受験』」をまとめたものですが、ブログに寄せられた質問への回答がとてもいいのです。コラムみたいなページですから、著者も気がラクだったかもしれません。いくつか紹介します。

こんにちは。仕事をなさりながらの受験準備はとてもお忙しいこととお察しします。私の場合ですが、下の子どもが生まれて間もなかったので(中略)、赤ん坊を抱えながら上の子の勉強を見るのは想像以上に大変でした。子どもは赤ん坊に邪魔されると感じて集中するのが難しく、私も片手でミルクを飲ませながら教え、赤ん坊もストレスを抱き‥‥という感じでした」

お悩みはよくわかります。「これでいいのか?」というような大きな漠然とした悩みだとお察しします。私は、きっとどんな受験対策をとっていても同じ悩みを抱えると思うのです。わが家は自宅学習でしたが、不安は常につきまとっていました。

ほかの方たちは教室でビシバシ訓練されているのに、わが子は細々と母の元での勉強の日々。勉強を教えるという点だけはこれでいいと思うまで考えたのですが、他者との訓練が足りないのではないか? という不安が常にありました。教室に通っている方でも同様で、「夏期講習はあれも取らないと駄目だろうか」「あっちの塾のほうがよかったのか」「この先生を信頼していいのだろうか」等々、悩みや不安は尽きないのではないかと想像します。

私は「これで大丈夫なのだ」と自分に言い聞かせることで、そのような迷いを振り切っていました。そうは言ってもまた暫くするとフワフワっと不安が膨らんできますが、負けずに「これでウチは良いのだ!」と念じました。ここで親の足元がぐらつくと子どもにも通じてしまうと思ったので踏ん張りました。

誰しも、この長い準備期間を順調に過ごすものではありません。葛藤あり、悩みありの長丁場。私も、鏡を見て鬼の形相の自分にビックリしたことがあります。それを見た子どもはどんな気持ちだったかと思うとゾッとします。どうぞ、気を楽になさって、この時期を乗り越えてくださいね。

子どもがそれほど心理的に問題なく取り組む状態であれば再チャレンジしましたが、「できないからイヤだー」と言うときはやめておいた、というのが私の経験です。それが原因で、せっかくの勉強習慣も崩れてしまったことがあったからです。

また、過去数年間出題されなかった分野は、私は、基礎問題を3〜5問する程度にとどめました。出来ればよし、出来なくても「これは今年も出ない!」とおまじないをかけて封印しました。気にしていたら切りがないと思ったからです。

うちの子も、挨拶はするのですが声が小さくて、横で見ていてハラハラしました。でもこればかりは性格からなのか、最後まで(というか、いまだに)大声ではできません。ただ、立ち止まって頭を下げ、相手の目を見て挨拶するということは、親が身をもって実践しているうちにできるようになりました。

あと、もうひとつ気をつけたことは、1から10まですべてを教えない、ということです。何かの説明をするときも、「これこれこうでしょう。こうなの。では、こうしたいんだけど、どうしたらいいかしら?」と、最後の部分を問いかけてみるのです。そこで子供は考えをめぐらせます。そして自分の考えを何か言うと思います。もしくは、「わからない」と言うかもしれません。大切なことは、話を聞いて、その情報から何か別のことを引き出すように考える、ということだと思うのです。そのような練習をつけてあげると、自分でとりあえず考えてみよう、という良いクセがつくと思っています。

スピードが上がらない場合は、思い切ってタイマーを目の前に置いて、「3分でどこまでできるかな?」とゲームのように取り組ませてみるのも手です。コツは、「全部を3分でやろうね」と指示しないことです。すると、子どもは、「3分で全部できなかったらダメなんだ」と思い、自信喪失してしまいます。「3分でどこまでできるかな」と設定することで、「できるだけたくさんやるぞ」というやる気を起こさせるのです。これがスピードを速めさせることにつながると思います。わが家ではこのタイマー作戦は、仕上げの時期に使いました。効果ありましたよ!




2006.5.9


幼稚舎に合格するのはどんな子なのか。明朗快活、動作がキビキビしている、何事にも積極的に取り組む、リーダーシップがある‥‥一口で言えば、「ひかっている子」が、幼稚舎に合格するタイプといわれていました。しかし、今回12人のお母さん方の話を聞くと、ちょっと違うかなという印象を持ちました。わずか12人の例では、サンプルとして何も意味をもたないという批判が出るかもしれません。しかし、わずか12人のサンプルでも意外な結果が出たのです。

各幼児教室からお母さん方を紹介してもらう際には、何の条件(男児だけとか兄や姉が幼稚舎に在学しているなど)もつけていません。「インタビューに応じていただけるならどなたでもけっこうです」とお願いしています。インタビュー原稿を読むと、何人かは「この子は合格して当たり前だろうな」というケースがあります。しかし、幼稚舎向きというよりは、「どの学校でもほしいと思う子」という程度のニュアンスです。

一方、こういうケースもあります。
「一見すると女子校タイプの子です。周りからも幼稚舎タイプではないと言われていました。屈託のない性格とかアクティブに振る舞っていたわけではありませんでした」
「何でも無防備に、興味があれば果敢に挑戦するという子ではありません。まずはお友達がやるのを観察して、物事を把握してから行動する子です」(事例4)
「幼児教室に入った当初は、すぐ泣き出すし、それにわがままでした。言葉数も少なかったですね。絵を描かせても上手ではないし、プリント問題をやらせても全然できませんでした」(事例6)
「人と話すことが苦手で、家族以外の人から話しかけられると黙ってしまう子でした。祖父から何か質問されても、すぐに答えられる子ではなかったんです。じっくり考えて、うなずくだけのときも度々ありました」(事例8)
慶應義塾幼稚舎 合格体験記の読み方(その2)より抜粋




2006.5.4


入試は学校の門に入ったときから始まっています。守衛さんに挨拶をしたかどうかをチェックしていた学校もあります。ある学校では、試験会場に入る際の靴の脱ぎ方もチェックしていました。靴の脱ぎ方ひとつでどんな育て方をしているかが推測できるということでしょう。油断できませんね。

慶應義塾幼稚舎の合格体験記(事例3-3)の中にこんな発言がありました。

――躾は厳しくされたようですね。
 ええ。細かいことまで言っていました。服をたたむときは雑にたたまないでお店に置いてあるようにきれいにたたむとか、靴下は右左そろえてしまう、脱いだ靴は向きを変えて置くなどですね。きちんとできなければ何度か言い聞かせました。そのうち、自然とできるようになって来ました。

 
受験対策の一環として、パジャマやソックス、下着などを子どもにたたませているケースは多いと思いますが、事例3-3のお母さんは、「お店に置いてあるようにきれいにたたま」せていたようです。「靴下は左右そろえてしまう」、「脱いだ靴は向きを買えて置く」など、子どもの躾にはきめ細かな心配りが感じられます。

脱いだ服を「お店に置いてあるようにきれいにたたむ」という点に、このお母さんがどんな子育てをしてきたか、ちょっと大袈裟ですが、このお母さんの子育てに対する「哲学」が窺えます。受験対策であれば、「子どもなりのたたみ方」でよしとするという人が多いと思います。この違いが合否の分岐点になっていたかもしれません。




2006.3.9


今日、会員のお母さんから電話をいただきました。ご紹介します。

会員 お礼を申し上げようと思って電話しました。
――と言いますと?
会員 以前、幼稚園受験のときに、いろいろとアドバイスをいただきました。今回、小学校受験が終わりましたので、ご報告旁々、お礼も申し上げようと思ったのですが、会員のパスワードはわからなくなってしまったし、たまたま、御社の本を何冊も購入していましたので電話番号がわかりました。
――それはどうも‥‥、で、どちらに決まりましたか?
会員 夫がどうしてもここに入れたいと言っていた洗足学園の受験に失敗しました。幼児教室の先生に桐朋小学校を受験させたいけれどどうかと相談しましたら、大手のJとSの2教室に通っていたのですが、どちらの先生もむずかしいとおっしゃるんです。桐朋は競争倍率は10数倍だし、とくに私の場合、通学条件外だから最初からムリだと‥‥。
――ええ、ええ。
会員 でも、もし合格したら引っ越せばいいと考えて、かまわずに受験手続きをしました。もともと幼児教室の先生がムリと言うんですから、落ちても気がラクでした。ところが一次試験は合格してしまったのです。何人くらい受験したのかわかりませんが、一次試験で300人くらいに絞り込んだようです。この300人から男女それぞれ16人ずつに絞り込むのですから、一次に合格したといっても、どっちでもよかったとはいいませんが、そんなに期待はしていませんでした。ですから、子どもに、「どうする? 二次試験、受けてみる?」って聞いたら、「うん、受ける」と言いました。1次試験のとき、私は風邪を引いていて、待合室で待っているときは、バッグを抱えて居眠りをしていたんです。親の面接はないといっても、待合室で保護者がどんな様子かはチェックしているから、しっかりしなけりゃいけないとわかっていたんですが、眠くて眠くてどうしようもありませんでした。
――たいへんでしたね。で、二次はどうでしたか?
会員 「転居を条件に合格」という通知をいただきました。合格したら引っ越せばいいと軽く考えていましたが、もともと合格するとは思っていませんから、本気で引っ越しを考えていたわけじゃありません。それでも唯一合格した学校ですから、不動産屋さんを通じて、いろいろ探しました。でも、学校が定める条件に合う物件がなかったんです。2、3、候補地を探して、ここはどうかと何回か学校に相談しましたが、どこもダメでした。そのうち子どもが引っ越しはイヤだと言い出しました。
――‥‥‥。
会員 桐朋を諦めて、今から出願できる学校はどこかというと、残っているのは御茶の水と筑波だけです。御茶の水は一次の抽選に外れました。残るのは筑波です。もうこの頃は筑波もムリと諦めていましたから、どうせ抽選で外れるから、早く済ませて早く帰りたいと思って、出口に一番近いところに座ったんです。母親と子どもには「30分で戻るからね」と言って‥‥。ところが出口に近ければ早く帰れると思ったら逆だったのです。いちばん最後でした。30分どころか、母親と子どものところに戻れたのは3時間後です。母親は孫に、私の子どもですが、「お前のお母さんは用事が終わった後、私達を待たせていることを忘れて買い物に行ったかもしれない」って言ったそうです。母は私を信用していませんから。えっ? 抽選結果ですか? 当たりました。
――二次はどうでしたか?
会員 肝心なときに何でこうなってしまうのか、バスが遅れましてね、受付修了の5分前でした。バスを降りて、子どもに、お母さんはノロいから、あなたは一生懸命走りなさい! お母さんは門の前で待っている。頑張れ!って。滑り込みで間に合いました。守衛さんが良かった、良かったと自分のことのように喜んでくれました。
――試験が終わった後、お子さんは何と言ってましたか?
会員 意気揚々と帰って来ました。大きな声で、「全部できなかった!」って。笑っちゃいますよね。元気いっぱい、ニコニコして、ハネるようにして戻って来ましたから、てっきりうまくいったと思いました。そうじゃなかったなんて‥‥。実は、この日、通っている幼稚園で劇があったんです。子どもに、筑波の2次試験を受けるか、幼稚園の劇に出るか、どっちにするかと聞いたら、主役じやないから、テストを受けると言ってました。
――お子さんもあまり期待していなかったようですね。
会員 ええ。ですから、2次試験の合格発表の日は、何人かのお母さんたちと「不合格残念ツアー」を組んでディズニーランドに遊びに行ってしまったんです。でも、ムリだとわかっていても、やはり気になりましてね、夕方、学校に行きました。門が締まる10分前でした。校内の掲示板を見たら、なんと合格していたんです。発表を見るつもりはなかったですから、上履き持っていません。ディズニーランドに遊びに行ってたとは言えないし、どうしようかとウロウロしていたら、「今日はいいですよ」と先生が笑って声をかけてくれました。恥ずかしかったですね。
――抽選はどうでしたか?
会員 受かりました。
――よかったですね。
会員 なんと不真面目な母親だと叱られそうですが、でも、私のような母親でもクジ運がよければ合格できるんですから、これから受験するお母さん方に自信をもってほしいと思って‥‥。
――いや、クジ運じゃないでしょう。桐朋の場合にしても、転居条件付きで合格させたくらいですから、お子さんのデキがとてもよかったということだと思います。筑波にしても、お子さんをほしいと思ったんでしょう。よかったですね。

*電話のやりとりをメモだけで再現していますから、不正確な箇所があると思います。近いうちにこのお母さんにお目にかかり、どんな子育てをされたのか、お話をお伺いする予定です。


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2006.1.21

立教小学校校長諸橋保夫さんのインタビュー記事を書きながら、ふと、この先生は開けっぴろげに何でも話してくれたけど、「ちょっと恐い人」と思いました。校長に就任して初めての保護者面接のときに、「趣味はスポーツ」と答えた父親が多かったようです。諸橋さんは中学高校大学を通じて体操競技の選手でしたから、好印象をもってもらいたいと思ったのかもしれません。

下心がミエミエです。どんな気持ちだったか。「でも、本当にスポーツが好きという人もいます。それに“深み”が違いますから」と答えています。いっそ、「そんなことで気を遣う必要はありませんよ」と答えてくれたほうがすっきりするのですが、「深み」が違うから、すぐわかりますよと言外にクギを刺しています。

中学高校、そして大学と続けてきた体操競技は、諸橋さんにとって、趣味というより人生そのものかもしれません。まさに「深み」が違うのです。「にわかスポーツ好き」は賢明ではありません。諸橋さんのインタビュー記事の掲載は1月下旬の予定です。立教小学校を受験する人は読んでおいてください。




2006.1.16

小学校受験という世界では、ときどき「常識を疑ってみる」ことも必要です。こういうものだと思いこまずに、ひょっとしたら、こんな考え方もアリだなとちょっと視点をずらしてみてください。そうすると、それまで気になっていたことや頭を悩ましていたことが、たいして意味のないことだったりすることがあります。

たとえば、行動観察では「目立つ子」「リーダーシップのある子」がいいといわれていますが、もし、お子さんが、いわゆる晩生(おくて)の子だったりすると、やはり気になりますね。もっと元気よく、ハキハキと返事をしなさいと注文をつけたくなりますが、受験のためにそこまでする必要があるのかどうか、「疑って」みてください。

首都圏のある人気校の場合、「目がキラキラ輝いている子」「明るく元気いっぱいの子」が合格するといわれています。そのため入試当日に、どんな服装をさせたら「明るく元気いっぱいの子」に見えるかに苦心するお母さんもいるらしいのですが、当の校長に聞くと、そんな馬鹿げたことを聞くなといわんばかりの口調で否定します。その人気校の生徒を観察してください。いろいろなタイプのお子さんがいるはずです。冷静になって考えてみれば、当たり前のことですね。

「小学校受験は母親次第」、お母さんがどれくらい頑張ったかで合否が決まるといわれていますが、ちょっと肩の力を抜いてください。というのも、「頑張りすぎた子」は敬遠される傾向にあるからです。このコラムでも何回か書きましたが、ペーパーテストの成績もいいし、行動観察や個別考査も何も問題がない子が入学してから、いろいろと問題になるケースが少なくないのです。

お子さんのありのままでいいのです。ボクもボクも‥‥と活発な子でなかったとしても、それはお子さんの個性です。もし、それで不合格になったとしても、学校側にお子さんのよさを見抜く目がなかっただけのことです。お母さんが頑張りすぎると、お子さんも頑張って、お母さんの期待に添おうとします。お子さんが「いい子」を演じないように見守ってあげてください。




2006.1.13

同志社32名、立命館41名、ノートルダム45名の合格者を出した京都幼児教室の熊本マリ子さんに、なぜそんなに合格者が多かったのかと聞いたら、「わかりません」という答でした。京都幼児教室は京都でも草分け的存在です。私立幼稚園・小学校の合格者数ではダントツの実績を誇っています。

首都圏の場合、幼児教室に通ったことを隠す保護者が多いのですが、京都の場合、この教室に通っていることが自慢のタネになるようです。京都の私立小学校の校長からも、「あの教室に通っていた子なら安心できます」という話を聞いています。だから、もうすこし自慢してもよさそうなものですが、「わかりません」と答えるところが、いかにも熊本さんらしいところです。

熊本さんには、この数年、何回かお会いしていますが、自慢めいた話はほとんど聞いたことがありません。一般論としても、こうあるべきだと「解説」することもありません。それでも、しつこく聞くと、「さあ、どうなんでしょうか」「保護者に聞いてください」です。なかなか取材しにくい相手です。

マスコミの取材に対して、わざとツッケンドンにしているというわけではなく、「何も特別な指導をしているわけではないから、記事になるようなことは語れません」ということかもしれません。しかし、競争倍率の高い小学校にこれだけの合格者を出すのですから、小学校側が、この子はうちにほしいと思うような指導をしているはずです。

熊本さんの幼児教育に対する持論の一つは、「幼児期の子どもに必要な知識や知恵のすべては家事手伝いで身につく」です。「お母さんの手伝いをしている子は、お行儀もいいし、頭の回転が速い、小さいながらも観察力や状況判断力もあるし、そして、ペーパーの伸びも早いのです」と言います。その辺に何か合格のヒミツがありそうです。

首都圏の読者には、京都の幼児教室の話は関心がないかもしれません。にもかかわらず、京都幼児教室の話を持ち出したのは、家事の手伝いをさせることがとても大事という熊本さんの考え方に共感していることもありますが、もう一つ、合格実績を誇らないという姿勢に好感をもちます。

余談ですが、ビジネス誌の取材記者をしていた頃、一代で大企業を築き上げ、名経営者といわれた人に数多く会いましたが、会社が大きくなればなるほど、あるいは業績がいいときほど低姿勢なのです。むろん、業績を得々として語る経営者はダメということではありません。単に好き嫌いの問題です。


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2006.1.12

お子さん(男児)が慶應幼稚舎に合格したお母さんにお話を伺いました。受験する年の最初の模擬テストでは1200人中600番台だったそうです。その後、受験するまで3回の模擬テストを受けましたが順位は上がりませんでした。

「語彙が少ない」「イタズラ好き」「落ち着きがない」「お友達が先にできたりするとすぐ泣く」「きちんと返事ができない」という状態だったようですから、幼稚舎を受験しても合格はむずかしいと思っていたようです。幼稚舎から郵送されてきた合格通知にわが子の受験番号が掲載されていても、「合格しているはずがない。わが子の受験番号は違うと思った」ようです。お子さんの受験番号をいろいろな書類で確かめただけでなく、お子さんにも受験番号は何番だったかと聞いたほどでした。3桁の区切りのいい番号だったのでお子さんも覚えていたようです。間違いなく合格したと確信して、ご主人に電話をするまでに30分もかかったそうです。

なぜ合格したと思いますかと聞きましたら、「思い当たることは何もない」と言います。では、お母さんの目から見て、お子さんの長所は何ですかと聞きましたら、「とても明るい子です」とおっしゃってから、ちょっと恥ずかしそうに、「とてもかわいい子です」と付け加えました。わが子を「とてもかわいい子です」とは言いにくいものですが、思わず、この言葉が出てしまうほどかわいいお子さんのようです。どんな育て方をしたのか、今、原稿をまとめているところです。



2006.1.11

「お入学くらぶ」には、おじいちゃん会員が何人かいらっしゃいます。時折、メールをいただきます。おじいちゃんといっても、最近までバリバリの仕事人間でしたから、パソコンは自由自在。山口県に住むおじいちゃんの家には、年に何回か大阪に住む息子さん夫婦が里帰りするのですが、5歳になるお孫さん(男児)との関わり方がむずかしいとお便りをいただきました。甘やかさないでほしいとお嫁さんから注文がつくようです。

おっしゃる通りですね。何せ、かわいいですからね。でも、そのうち甘やかすとつけあがるし、ガツンと叱れば母親が血相を変えて睨むようになります。やっかいですね。私には6人の孫がいますので、孫の飼育には慣れています。そうです、「飼育」だと思えばいいのじゃないでしょうか。だいたい3〜4歳までの男の子の頭の中身は‥‥娘たちがこのサイトをときどきチェックしていますので、あまり過激なことはいえませんが、まあ、孫とは適当な車間距離を保つことが、お孫さんとお嫁さんとの良好な人間関係をつくるコツです。

若い読者から、年寄りの孫談義なんか興味ないと叱られそうですが、もし、おたくのおじいちゃんが孫を甘やかして困るというなら、「孫とは適当な車間距離を保ってほしい」とやんわりと注文をつけてください。また、「飼育」云々と乱暴なことをいいましたが、物心がつく前にしっかりと躾なさいということを申し上げたかったのです。じいちゃんの役割は、孫を見守ることと躾る、この2点にあると‥‥この言い訳、ちょっと苦しいですか?



2006.1.10

あるお母さんの話を聞いていて、ひょっとしたら、合格のポイントはここにあったかもしれないと思い当たったことがあります。面接で祖父と同居しているという話題になったとき、このお母さんは「祖父が子どもをしつけてくれた」と答えたのです。

なぜ、それがポイントになったのかというと、校長の多くは祖父と同じ世代です。60代以降の世代は貧しい時代に育ちました。いつもお腹を減らしていて、学校から帰ると、「何かない?」というのが口癖になっていました。この世代の人間は、苦労は買ってでもしろという時代に育っています。それが人間形成に役立つというのは建前です。結果としては、苦労体験がバネになったかもしれませんが、要するに、苦労ばかり多くて、そうと思わなければやりきれなかったのです。

そういう時代を生き抜いてきたからこそ、今の自分があるという強烈な自負心をもっています。当然、「満ち足りた生活の中からは知恵も工夫も生まれない」と思っているでしょう。これは体験的な信念です。むろん、それを現代の若い世代に押しつけてはいけないということも理解しています。しかし、満ち足りた生活の中でぬくぬくと育っている子どもたちを見て、内心、苦々しく思っていることは容易に想像できます。そういう世代が保護者面接をし、合否の最終決定権をもっているということを知ってほしいのです。

こういう世代の面接を受けるのですから、「一工夫」があってもいいと思います。というのは、何人もの校長にインタビューをしていて気づいたことは、こちらの話に、そう、そうなんですよと校長が相づちをうつときは、話題に共通項があったときです。子どもには家の手伝いをさせたほうがいい、自分の思い通りにならないことがあることをたびたび経験させる、我慢をさせる機会を多くもつ、待たせる、ほしいものがあってもすぐには買わない、きちんと挨拶と返事をさせる、食事のときは正座をさせる、どんなことであれ親の言うことには口答えをさせない‥‥ずいぶんと厳しいようですが、そういう子育てをしている家庭の子どもは、合否の決定権をもつ世代のウケがいいということも含んでおいてください。

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2006.1.9
このお正月、里帰りをしていた娘の長男(5歳。男の子)と「男の約束」をしました。母親からこっぴどく叱られた後、「こういうときは耳をふさいでいろ、そうすればママの声は聞こえないから。でも、このことはママには言うな。約束だ」と指切りをしたのですが、それを逆手にとって、「おじいちゃんがボクにこう教えたとママに言いつける」と言い出したのです。半年前、ママに内緒で鉄砲を買ってあげて、それをヒミツの場所に隠しておき、二人でこっそりと楽しんだのですが、今や「男の約束」を脅しのネタに使うようになったのです。油断できませんね、最近のガキ、いや、子どもは。



2006.1.8

「4校受験して、1校不合格、2校補欠、合格したのは慶應幼稚舎だけでした」
「落ちていると思って、幼稚舎からの通知は2日間、開封しませんでした」

昨年暮れから、慶應幼稚舎にお子さんを合格させたお母さん方の体験談を取材しています。すでに12人の取材を終え、そのうち、たまたま原稿が早くできあがった2人のお母さんの「合格の弁」が上記のようなものです。幼稚舎というと、首都圏では難関中の難関校。それこそ「宝くじを引き当てるようなもの」といわれていますが、2人の体験談を読むと、ここがポイントだなと思い当たる節がいくつかあります。いわば「合格のセオリー」です。1月中に12人全員の原稿ができあがります。1人あたり約20ページ(単行本換算で)の体験談です。12人もそろうと幼稚舎に合格する子ども像がある程度見えてくると思います。体験談は順次公開していきますので、ご期待ください。




2006.1.7

面接官が校長先生の場合、校長先生の教育観や趣味が何かを知っておいたほうがいい、そこまで考えて面接に臨む保護者が少なくないようです。ある校長から、こんな話を聞きました。「私が校長に就任した年の面接では、父親の多くが趣味はスポーツだとおっしゃっていました」というのです。というのも、この校長は体育学部出身だからです。

この学校の保護者面接では、どういうわけか父親に対して、面接のときに、「趣味は何か」と質問するケースがとても多いのです。前任の校長のときもそうでした。ですから、新任の校長が体育学部出身という理由から、「趣味はスポーツ」という父親が増えたのです。面接官の関心を呼ぶような趣味なら好感をもたれる、そう期待したのでしょうね。

こうした現象を校長先生はどう思っているのか、興味がありますね。面接の場とはいえ、スポーツを愛する人との「語らい」を喜んだのか、それとも迎合する父親たちに腹立たしいと感じたか。「まあ、スポーツが好きな父親が増えたというのは結構なことです」と笑っていました。当たり障りのない、無難な答えです。先生が校長に就任したら、急にスポーツ愛好者が増えたというのは、面接で好感をもってもらいたいという気持ちがミエミエです。腹が立ちませんかと聞くと、「ちょっとお話を聞けば、本当にスポーツが好きなのかは見当がつきます」と答えています。「結構なことです」という言葉の裏には、付け焼き刃でスポーツ好きを演じても役に立ちませんよという本音が隠されていると見ていいと思います。




20061.6

我々の取材に対して、校長先生方は素直に本音を語ってくれません。真正面から、「両親面接で本当に知りたいことは何ですか」と聞いても、「本校の教育方針をどれくらい理解していただいているか、その辺がもっとも知りたいところです」などとまっとうな答えしか返ってきません。でも、校長先生方の本音は、勤務先の経営は安泰なのか? この父親はリストラされる不安はないか? 月謝をきちんと払っていけるのか、学校でトラブルが生じたときクレームをつけてくるタイプか‥‥こういったことを知りたいのです。でも、我々の取材に対して、そうだとは言えません。そこで、質問の角度を変えて質問します。たとえば、こんなやりとりからポロッと本音が飛び出すこともあります。

――保護者の多くは、三十代〜四十代が大半と思いますが、この世代は権利意識が強いというか、自分勝手な一面もあります。何かにつけて「口やかましい親」もいるのではないですか?
校長先生 ええ。一般的にそのように言われていますね。
――いきなり教育委員会に訴える親もいるそうです。そのほうが学校も真剣に対応してくれるということを知っているようです。やっかいですね、こうい保護者は。
校長先生 ええ。
――当然、保護者面接では、その辺がチェック項目になりますね。
校長先生 はい。

インタビュー記事のむずかしさは、たとえ本音を引き出したとしても、やりとりをそのまま書けないことが多いのです。「言い過ぎた」と思ったときは、オフレコを念押しされますから書けません。でも、「書かれては困る記事こそ読者は知りたい」のです。このため、特定の学校名は伏せて、一般論として、「口やかましい保護者」は敬遠されるから注意してくださいと、たとえば、こういうコーナーで書くしかないのです。




2006.1.5
昨日(1/4)の「編集者日記」をご覧になった方から、早速、メールをいただきました。一つは、日記の筆者である私の年齢です。「クラスの中に弁当を持たせてもらえない子どもがいたという記述から推測して、戦前、それも昭和1桁世代か」と思われたようですが、1943年生まれですから、63歳です。おじいちゃんの世代です。もう1通は、「これまで小学校受験には何となく賛成という態度だったが、これを読んで、迷いが吹っ切れた」というご意見もありました。「家庭環境が同じような子どもたちの中で勉強させたい」という気持ちもよくわかります。また、「いろいろな家庭環境の子どもたちの中でもまれて育ったほうがいい」とする考え方もあって当然でしょう。悩ましい問題です。


2006.1.4

経済的な事情で文房具代や給食費などが払えず、自治体から援助してもらっている児童・生徒の割合は4人に1人(公立の小中学校。東京・大阪の場合)――という新聞記事(朝日06.1.3)を読んで、ちょっと大袈裟ですが、「愕然」としました。

50年近く前、私が小学校3〜4年生だったと思いますが、弁当の時間になると、すっと教室からいなくなる子どもが2〜3人いました。弁当をもたせてもらえなかったのです。朝早く学校に来て、黒板に名前を書いて授業には出席しなかった子もいました。幼い弟や妹の世話をするため学校には来られなかったのです。

当時は、みんなが貧乏でした。弁当をつくってもらえたといっても、ほとんどの子どもの弁当は、麦入りご飯におかずは梅干しと昆布の佃煮だったように記憶しています。週に一度くらいは卵焼きが入っていました。家庭が裕福な子(私のクラスの場合、村長の息子でしたけれど)は真っ白いご飯の弁当でしたが、いつも一人でポツンと食べていました。

戦後60年、もう「貧しい子どもたち」はいなくなったと思っていたのです。ところが、就学援助率をみると、都道府県でもっとも高いのが大阪府の27.9%で、以下、東京都の24.8%、山口県の23.2%と続きます。市区町村別では、東京都の足立区が42.5%とスパ抜けて高い数字になっています(2004年度文部科学省調査)。

世の中は、経済的に豊かな層と貧しい層の二極化が確実に進んでいるようです。イヤな言葉ですが、「勝ち組」と「負け組」がますますはっきりしてくると思います。私たちの世代は、誰もが頑張れば頑張った分だけ見返りが得られた時代です。有名大学を卒業していなくても大きな会社のトップになれる可能性がありました。私の友人の中にも、夜間の高校を出て、今や誰でも知っている大きな会社の社長になった人間もいます。また、出世しなくてもいい、マイペースで仕事をしたいという人間もリストラに追い込まれるようにことはなかったのです。デキのいい人間もそうでない人間もラクに生きられたのです。しかし、今、5歳6歳の子どもたちは厳しい競争時代を生きなければならないかもしれません。


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