連載企画 願書・面接資料の書き方

第10回


簡単に「共感」「感銘」しないほうがいい

「志望理由」の中で使用頻度の高い言葉は「共感」と「感銘」でしょうか。「学校説明会のときの校長先生のお話に感銘をうけました」「御校の教育方針に共感しました」等々のケースです。どうでしょうか。あなたが今書きかけている志望理由の中にこれらの言葉は入っていませんか?

むろん、「共感」と「感銘」という言葉を使ってはいけないということではありません。本当に「共感」「感銘」したのであればおおいに使ってもいいと思います。

しかし、校長先生や面接官はこういう受け止め方をしていることも知っておいてください。「御校の崇高な建学の精神、国際化時代を先取りした教育方針に共感したとか、深く感銘を受けたといった志望理由を読むと、さて、どれほど本校のことを理解している上でそう書いているのか、疑問に思うケースもあります」

ある人気校の場合、ほとんどの願書に教育方針の「○○○○(4文字)」という言葉が盛り込まれているようです。「御校の○○○○に深く感銘しました」「○○○○は私どもの家庭の教育方針と同じです」等々ですが、当の校長に聞くと、この○○○○という教育方針の神髄は私どもが一生涯かけても理解できないほど崇高なものです」と言います。

「御校の『思いやりのある子を育てる』という教育方針に感銘を受けました」という志望理由を読んで、本校の教育方針をよく理解している、こういう熱心な保護者にぜひ来てほしいと思うかどうか。逆ですね。本気で入学する気があるのかと不信感をもつかもしれません。

もう一つ、「共感」「感銘」の乱発は、

平たくいうと、そう簡単に共感したり、感銘してほしくないと言いたいのです。親や親族の多くが志望校の卒業生とか、あるいは学校関係者の子弟というなら、学校のことをよくわかっているだろうから、「共感」「感銘」も素直に受け止められるけれど、ホームページを見た、学校案内を読んだ、授業を参観した、在校生の親から話を聞いたというくらいのことで、「共感」「感銘」は大袈裟すぎるということかもしれません。




「登下校中の御校の生徒を何度か拝見しました。列を乱すような生徒は1人もおらず、よくぞ、ここまでしっかりと教育されたと驚嘆しております。わが子も御校のご指導の下で‥‥」といわれても、読み手が苦笑するケースもあります。というのは、そういういい子ばかりではないから、各校とも行動観察や個別テストに力を入れているのです。

学校のいい面ばかりを見て、それを褒め称える保護者に対して、ある校長は面接の場で、「何も問題がないわけじゃありません。いじめもあるし、無気力な生徒もいます。私どもの教育方針についていけずに退学した生徒もいます。いいことばかりではありませんよ」と諭したケースもあります。

学校側が「本校のことをよく理解した上で応募してほしい」という意味は、学校や教育方針の理解が中途半端というより、もっと基本的なことを知ってほしいというケースが多いようです。「うちは小学校しかないのに、御校の一貫教育の下で‥‥といわれたら、どんなに子どもの成績がよくても合格させるわけにはいきません」はめったにないケースでしょうが、「入学後に、お弁当を毎日持たせなけりゃいけないなんて知らなかった」「大学までエスカレータ式に進学できると思ったのに、小学校からの生え抜きの生徒の割合は3割以下とは知らなかった」など、後から、こんなはずじゃなかったとクレームをつけてくる保護者が少なくないから、どんな学校かをよく調べて応募してほしいというのです。

「共感」「感銘」は多くの保護者が書いています。試験官にひと味の違いをもってもらうためには、建学の精神や教育方針を志望理由に持ち込まないと割り切ったほうがいいでしょう。そうすれば、ほかにどんなところがいいと思ったのかを見つけだしやすくなります。




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