連載企画 願書・面接資料の書き方

第34回  

●「志望理由」を書くコツ 




願書作成の最大の難関は「志望理由」のようです。幼児教室の先生からは、もっと具体的にとか、家庭教育の方針と志望校の教育方針が一致するように書いてくださいとアドバイスされていると思います。

しかし「家庭教育の方針」といっても、もともと受験しなければそんなややこしいことは考えなかったでしょうから、どう書いていいかわかりません。家庭の教育方針がないのではなく、改めて考えたことがないのです。「書く」というのは、さらにむずかしくなります。

また、志望校の教育方針との一点は何かといっても、各校とも教育方針に大きな違いはありません。「全寮制で6年間、ビシバシしごきます」という教育方針であれば(むろん、そんな小学校はありませんが)、それに感動したでいいのですが、「国際化時代を生き抜く」とか「自ら考え、自ら行動する」、「他者精神を重んじる」などというのでは、あまりにも漠然としていて、共感したとか賛同すると書くのが白々しくなります。

志望理由の本音は、有名だから、名門校だから、大学までストレートに進学できるから‥‥という人が多いと思います。本音が書けないために、どうしても当たり障りのない文言で、しかも抽象的な志望理由になってしまうのです。ここはもっと具体的にとか、エピソードを交えて‥‥などと指摘されても、どう書いていいかわからないというのが本当のところでしょう。

わが家の教育方針+志望校の教育方針との一致=志望理由という図式にこだわるから書きにくいのかもしれません。願書とは、「わが家・わが子を売り込むためのカタログ」と考えたらいいと思います。商品カタログですから、いかにすばらしい家庭か、優秀な子どもかをPRすればいいのです。これなら家庭の教育方針とか志望校の教育方針との一致などとややこしいことに頭を悩ませる必要はありません。

家庭の教育方針となると茫漠として書けなくても、わが子にはどんなよさがあるか‥‥これなら、いくらでもでてくるのではないでしょうか。1歳からスイミングスクールに通わせていて、5歳にして小学校4年生レベルだというなら、我慢強い、根性がある、頑健、ねばり強いなど、いくらでも思いつくと思います。それを志望校の教育方針にむすびつければいいのです。

「我が家」のウリは何もないという人も多いと思いますが、祖父母が同居していることも話のもっていきようで「ウリ」になります。家族旅行が多い家庭なら、行き先々でコレコレの体験をさせているという点が「ウリ」になります。親戚に政治家がいるのも「ウリ」です。遺産がたくさんあるのも「ウリ」です。

要するに、「うちの家族・うちの子を合格させるメリット」を相手に伝える、願書とはそういうものだと割り切ってください。そうすれば簡単に書けるのではないでしょうか。不必要にへりくだったり、謙遜するは避けるべきです。「この商品はいいところはなにもありません」という態度は相手に失礼です。何百枚もの願書に目を通す先生方は、「この家族・この子を合格させる材料」を見つけたいと思って一生懸命に読んでくれるのですから。




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