これから1年間、受験準備のために幼児教室に通わせたり、家庭でいろいろなことを教えたりすると思いますが、ポイントは教えることではなく、やらせてみることです。教えたのでは、脳の中の配線がしっかりとつながりません。
夏場に泊まりがけの合宿指導を行う幼児教室があります。1〜2日というケースが多いのですが、中には2泊3日、3泊4日という例もあります。ママ抜きで泊まるのは初めていう子どももいます。夜、泣き出さないかと心配で眠れなかったというお母さんもいます。夜中の1時まで寝なかったというお母さんもいました。
お母さんだけでなく、多くの幼児教室の先生方が、「合宿を経験すると一回り大人になる」と言います。「大人になる」とは、「ちょっとお兄ちゃん(お姉ちゃん)」になるということです。「賢そうな顔になった」というママもいます。合宿に行く朝、ママが一緒でなければイヤだと半泣きしていた子が、迎えにきたママが思わず抱きしめようとしたら、恥ずかしいからヤメてというほど変わるのです。
なぜこんなに変わるのかというと、いろいろなことを経験したためです。お風呂に入ったときは自分で体を洗います。パジャマもひとりで着替えます。取り替えた下着はきちんとビニールの袋に入れて持ち帰ります。ふとんも自分で敷きます。
夕食の支度も子どもたちがします。メニューの定番はカレーが多く、買い物も子どもが行きます。ジャガイモ、ニンジン、肉、タマネギなどカレーの材料を買ってきます。子どもだけで買い物をするのは初めてという子どもが大半です。300円とか500円のお金をもって必要なものを買います。リンゴを4つほしいとき、1つ100円のリンゴとザルに盛られた4つ480円では、引き算の計算ができなくても、20円のおつりがもらえるかどうかでどっちが得かを知ります。
合宿所からスーパーまでわざわざバスを利用させている幼児教室もあります。しかも、降りたバス停からスーパーまでの道順を教えていません。「バス停を降りたら、誰かに教えてもらいなさい」と教えています。4〜5人のグループといっても、初めての場所で知らない大人の人に道順を聞くのですから、ずいぶんと心細かったでしょうし、怖い思いもしたと思います。
でも、いろいろなことを体験することによって、子どもたちの頭の中の配線は一挙に増えたり緻密になります。この時期の子どもの脳というのは、広々としたところにポツンポツンと駅があって、その駅と駅の間が線で結ばれていない‥‥イメージとしてはそんな状態です。しかし、いろいろなことを体験する、しかも自分で何かができたということがキッカケとなって、新しい駅がどんどん増えるだけでなく、駅と駅の間の線がちょうどアメーバのようにつながったのです。賢そうな表情になったと思えるのもそれが理由です。教えるのでなく、やらせる。これが子どもを指導するときのコツです。