面接対策27回●面接で何を知りたいのですか?

国立学園小学校校長 神林照道さん


――面接のときは、両手を膝に置く、足はブラブラさせない、体をグニャグニャさせない、目は先生の顔に向ける。子どもたちはそう教えられています。
神林 でもね、1年生になって、他の子どもたちと一緒になるとそうじゃないんです。そんな行儀のいい子はほとんどいません(笑)。それが子どもじゃないですか。

――きちんとしていなければ面接で落とされるでしょう。
神林 いや、うちの場合は、たとえ子どもが部屋の中を飛び回っても、それを理由にして不合格にすることしません。面接のときは、親御さんが国立学園のすばらしさを滔々と述べてくれますが、そんな話を聞いていて子どもがじっとしていられるはずもない(笑)。

面接のときに行儀よくしていたから合格にするとか、そうじゃなかったから不合格にするなんてモノサシは持っていないということです。極端なことを言うようですが、面接のときに部屋の中を飛び回るような、そんな子どもらしい子どものほうが、素直に「自ら学び、自ら考え、自ら行動する子」に育っていくと思っているんですがね。というと、面接のときに飛び回る子が多くなるかもしれませんが(笑)。

神林 都内には50校を超える私立小学校がありますが、むろん、そういうきちんとした子どもをよしとして入学させるところもあると思います。そうでないところもある。(中略)国立駅から東、つまり都心に近いところから来た人はみんなスタイルが同じです。いわゆる幼稚園・小学校受験ルック。西から来た人の服装はバラバラ(笑)。子どももほとんどベストは着ていない。親御さんたちは、国立はお受験ルックでなくても不利にならないとわかっているから、自分たちにいちばんふさわしい服装を選んでいるのでしょうね。

――面接で不合格になるのはどんな場合ですか。
神林 私はこの学校に来て17年になります。入試に携わってから16年になりますが、面接結果だけを理由にして不合格にしたケースは、さあ、何人いますかねえ。せいぜい数人でしょう。

――どういうケースですか。
神林 うちは小学校だけしかないのに、「御校のように大学までの一貫したところで教育してもらいたい」というのは困ります(笑)。入学する子どもがかわいそうです。これは志望校を間違えているんですから、不合格になったとしても学校が拒否するんじゃない。

もう一つは、男の子だったら、「中学は開成とか麻布に入れてくれ」、女の子は「桜蔭、雙葉に入れてくれ」と。それはお断わりします。子どもの成長によってどうなるかわかりませんからね。ですから、子どもの面接でダメだったのは1人もいないと言ってもいいです。

――たとえば、父親の勤務先が経営破綻を噂されている会社という場合、やはり警戒しますか。
神林 いや、うちは父親の職業は問いません。父親の仕事は関係ないですよ。
――願書の備考欄に書く親も多いようですが。
神林 備考欄には何も書かないでくださいとお願いしています。
――なぜ書かせないのですか。
神林 あそこはこっちが書く欄です(笑)。
――しかし、父親の仕事のことを聞く学校は多いですよ。
神林 ほおっ、そうですか。でもね、入学のときにチェックしたって、そんなことはどうなるかわかりませんよ。どこの銀行に勤めているから大丈夫、この会社はだめというのは、子どもを育てることとは関係ない。現に、うちでは何もチェックしていないが、月謝が払えないというケースはありませんよ。

――親には何を聞くんですか。
神林 志望動機です。それだけはちゃんと聞きますよ。それにわが子をどうとらえているかです。きちんと答えてもらえれば面接は大丈夫です。

――教育方針のキーワードをどう志望理由の中に盛り込むか、答え方に頭を悩ませる親も少なくないようです。
神林 アハハハ。何でそんなことに神経を使いますかね。思ったこと、考えたことを話してくださればいいんですよ。

――校長の話が面白かったというのは、志望理由になりませんか(笑)。
神林 いっこうにかまわない(笑)。「自ら学び、自ら考え、自ら行動する子を育てるという御校の教育理念の下に、豊かな人間性を培うために、やさしさ、たくましさ、かしこさを中心に据えた教育方針に感銘を受けました。我が家の家庭の教育方針とぴったりです。ぜひお願いします」というありきたりの答え方よりもよほどいい(笑)。

要するに、答え方の内容に点数をつけているわけじゃないんです。「説明会の後の授業を拝見したら、教師と子どもの暖かい関係に感心した。ああいう雰囲気の中で子どもを教育したい」ということでもいいじゃないですか。

私は、学級通信に掲載された子どもたちの日記を読んで、その感想をはがきに書いて送っています。この話に感動したとおっしゃった親御さんがいたんですが、そういうことでもいいんですよ。とにかく受験する学校を間違えていなけりゃいいんです(笑)。わが子へのかかわり方を自分の考えで、自分の言葉で語ることがいちばんです。
(『平成19年度 お入学の本 首都圏版』より抜粋)


――平成18年秋の入試、どんな感想をお持ちですか?
神林 ここ数年、面接などを通して強く感じていることですが、子どもたちを見ていると、これが本当に6歳児かと驚きます。面接時間はせいぜい7分程度ですが、どの子もほとんど例外なくきちんと座っていて、手も両膝におき、受け答えもしっかりしています。

お父さんお母さんが話している間でも僕から目をそらさず姿勢も崩しません。よくしつけられていると感心しますが、さて、この子は本当はどんな子だろうかと思うのです。

というのも11月の考査から5か月経って、翌年4月に入学してくるわけですが、入試のときと同じようにきちんとしている子はいません(笑)。校長先生にお会いするときは、ともかくきちんとしなさい。そうしないと、あなたが行きたい学校に入れないんだよと言われているんでしょうね(笑)。

入試が終わってしまえば、ご両親もきびしいことはおっしゃらないだろうし、子どもはもう演技しなくていいと思っている(笑)。ですから、入試の面接のときに、姿勢があまりよくないとか、受け答えがぎこちない子がいるとほっとします。この子が本当の6歳児なんだなと(笑)。

――受け答えもしっかりしていますか?
神林 ええ、「お名前は?」と聞くと、ふつう「神林照道」「神林照道です」と答えますが、最近は、多くの子どもが「僕の名前は神林照道です」と答えます。中には、「僕の名前は神林照道と申します」とずいぶん丁寧な言い方をするんだけれど、それはあなたの言葉じゃないんじゃないかと‥‥。

そんな答え方は不自然だとか気に入らないというわけじゃないけれど、せっかくそういうふうに出来るようになったんだから、入試が終わった後も、そういう言葉遣いが出来るように子どもを見守っていただきたいですね。ついでに申し上げておきますが、丁寧な言葉遣いをしたかしなかったかは、よほどのことがないかぎり評価の対象にはしていません。

――そのときの言葉遣いや態度は問題にしていますか?
神林 いや、「はい、何々です」と丁寧語が使えたからプラス、使えなかったから減点ということはありません。

――第一印象のよさも受験対策の大きなポイントになるといわれています。そういうものですか。
神林 まあ、そんなことに気を遣う必要はありません。頭が良さそうだとか、快活な印象だなど、見た目のよし悪しで合否が左右されるなんてことはあり得ません。どの学校も事情は同じと思いますが、合否の判定はそんな単純なことではありません。

私どもでいえば、そこまで気を使っているのかというようなこともやっています。例えば、面接のときにあまり話が出来なかった子の場合、ほかの考査を担当している先生方に対して、そちらではどうかと聞きます。そうすると個別考査のとき、この子はハキハキと答えていたとなれば、面接のときは緊張したか何かの理由でたまたま話ができなかったとわかる。

――ところで、親子面接の評価は、あまり重きをおいてないと聞いていますが‥‥。
神林 いや、重視していないと言うと、ちょっと語弊があるかもしれません。ペーパーテストや集団行動に比べれば評価の比重が低いということです。面接で不合格にしたというケースは、この20年間で数人程度です。志望校を間違えたというケースです。

じゃ、なぜ面接をするのかというと、一応どういう学校であるかを理解した上で受験していただきたいのです。学校の特性を間違って入学させると子どもがかわいそうなのです。また、わずかな時間だけれど、子どもと保護者の関係がどうなのかを見たいためです。

――親の面接はあまり神経をつかわなくていいですか。
神林 ええ。とくに練習をしたり、面接を受けるときの態度を子どもに特訓したりする必要はありません。普段のままで面接に臨んでいただければ十分です。「お受験ルック」でなければならないなんて、少しも考えておりませんよ。

――ホームぺージに盛り込まれている程度のことは理解しておく必要があるでしょうね。志望理由を聞かれたときに備えて‥‥。
神林 まあ、いろいろな機会を通じて本校のことを知っていただくのはありがたいのですが、事前に一問一答を練習するようなことはしなくてもいいですよ。

要するに、極端な言い方ですけど、うちは6年生までしかない学校だということだけわかっていればいいんです。小学校から大学までつながっている中で、子どもを12年間とか16年間育てていきたいなんていうんじゃ、これはうちの学校には、ふさわしくないわけです。そこを間違えないようにしてもらえばいい(笑)。
(『平成20年度 お入学の本 首都圏版』より抜粋)


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