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第10回●合格材料を盛り込んだ志望理由になっているか

 

受験を予定しているが、どんな準備をしたらいいのかというお問い合わせをいただくことが少なくないのですが、「まず受験予定校(園)の志望理由を書いてください」と申し上げております。受験校(園)も確定していないどころか、幼児教室も決まっていないのに、そんなことをする必要があるのかと疑問をもつ親御さんが少なくないとおもいます。

小学校受験は毎年秋です。志望校の絞り込みをするのは受験する年の5月以降でしょうか。それ以前に、いちおうの心づもりをしていても、学校説明会に参加したり、塾や幼児教室の先生の意見を聞いて、最終的に複数の受験校(園)が確定するのは8月に入ってからというケースが大半だとおもいます。そういうスケジュールだと願書の提出期限は目前ですから、志望理由をじっくり考える時間がありません。

このため皆さんがお書きになる志望理由は「版で押したような志望理由」になってしまうのです。「御校の○○に共感して」「学校説明会での校長先生のお話に感動して‥‥」など、ワンパターンの志望理由が多く、「私どもは子どもをこう育ててきた」という肝心な部分がすっぽり抜けているか、曖昧なのです。

志望理由に書くべきことは2つです。「わが子はどんな子どもか」「受験校(園)のどんなところがよいとおもって志願したのか」、この2つが書き込まれていないと、面接官は、この子を受け入れていいのかどうか、その判断材料がない志望理由になってしまうのです。

あるお父さんから送られてきた志望理由は添削の必要がないほどよく書き込まれていたのですが、志望校はかなりの人気校でしたから、お父さん自身、これでいいのかと迷っていました。「ちょっと平凡かな」と感じていたようです。ご自身は曾祖父の時代から続いているその地域ではよく知られている会社を受け継いでいました。

なぜ、そのことを願書に盛り込まなかったのですかとお伺いしました。そうしたほうがいいとわかっていても、どう志望理由に結びつけたらいいか、それを文字や言葉に表現できなかったのです。

前置きが長くなりました。なぜ、学校側に「この子・この家族がほしい」と思わせるような志望理由がみつからないのかというと、答は1つです。要するに、準備不足です。わが子はこう育ってほしい、そのためにわが子が生まれたときから、父親として母親としていろいろなことをしてきたにもかかわらず、言葉として、あるいは文字として表現できないだけのことです。時間をかけてじっくり考え、ご両親が話し合っていれば、「わが子・わが家のウリ」が見つかるはずです。「わが子・わが家のウリ」が何もないのではなく、「気づかない」だけです。