「伝える技術(その1)」
コンパクトに答えられないと不利
言いたいことを正確に伝える。簡単なようですが、これが案外とむずかしいのです。夫婦の間でも、真意が伝わらずにもどかしいおもいをしたとか、何度言ってもわかってくれない。それどころか、間違って伝わっていたり、誤解されたということは誰でも何度も経験しているとおもいます。夫婦の間なら、相手が理解できていないとわかれば、私の言いたいことはこうだと何度でも説明できます。
しかし幼稚園・小学校受験のばあい、おおかたの面接官は保護者の言うことに耳を傾けるだけです。端的にお答えくださいとか、おっしゃりたいことは何ですかなどと、面接官が保護者の答えに口を挟むようなことはありません。よほどの勘違いや質問の聞き違えがあれば、その場でもう1度質問の趣旨を説明してくれますが、基本的には、保護者の答えることに対して、面接官は「耳を傾けるだけ」です。保護者が要領よく話せなかったとしても、あるいはトンチンカンな事を答えたとしても面接官の反応はおおかたこんな感じです。
「本校の教育方針をよくそこまで研究していただきました。お手数をおかけしました」
「お忙しいにもかかわらず、学校説明会にご参加いただきありがとうございました」
「私(校長)の話に共感していただきこんなうれしいことはありません」
「おもいやりのあるお子さんに育ったようですね」
「お子さんにそこまで家事を手伝わせているとは感心しました」
以下は、極端なようですが、実際にあったケースです。志望理由を問われて、父親はこう答えました。
「御校の小中一貫教育に魅力を感じました。小中9年間を6と3ではなく、5、3、1に分け、最後の1を高校受験対策に充てる。すばらしい教育方針だと感動しました」
面接を受けた小学校は附属校に中学をもっていません。父親は別の受験校と間違えているのです。でも、面接官はにこやかに、こう答えたようです(不合格です)。
「本校には中学はありません。しかし、そこまで一貫教育のよさを研究された熱意は敬服します」
受験校を間違えるなどということはあり得ないとお思いでしょうが、案外と少なくないのです。保護者が勘違いをしているとか回答内容に疑問があったとしても、その場で聞きただすようにことはめったにありません。面接時間はせいぜい10分です。面接官は父親に何問、母親に何問、親子面接であれば子どもの何問と割り振っていますから、父親に疑問点をただす時間的なゆとりがありません。
子どもの長所は何かと聞かれて、学校が求める子ども像とは関係のない長所を得々と答えてしまったようなばあいでも、面接官は、すばらしいお子さんですねと感心します。
何が言いたいのかわかりにくい回答・・こうしたばあい、面接官が「本校にぜひお迎えしたい保護者」と評価してくれるかどうか疑問です。常識的には、不利でしょう。お子さんの成績が合格圏内に入っていたとしても、保護者面接の減点で合格圏内から押し出されるリスクがあります。「耳を傾けるだけの面接官」に対して、こちらの言いたいことを正確に伝えるだけでなく、相手に理解してもらうにはどうしたらいいか。「伝える技術」とはどういうものか。次回以降、追々説明して行きます。 |