|
志望理由の多くは堅苦しい文章です。軽いタッチで、エッセー仕立てなどという志望理由はありません。わずか数行、文字数にして250字前後の中に、いかに志望校の教育方針をよく理解しているかだけでなく、家庭の教育方針との一致点まで盛り込もうというのですから、ガチガチの文章にならざるを得ません。試験官(面接官)は何百枚もの願書に目を通すのですから大変な作業です。そういう中で、「やさしい文章」に出会うと、読み手はほっとするに違いありません。下記の2つの志望理由を読み比べてみてください。
志望理由A
息子が世の中に巣立った時、その時代の社会が直面している深刻な問題の解決に取り組み、新たな社会価値を生み出すことができるような人間になって欲しいと願っております。それを実現するため、高い学力と伝統的な宗教哲学に基づく優れた人格形成、社会奉仕の精神を教育方針とされている貴校で、子供と共に私達両親も学ばせていただきたいと思い、志願致しました。
志望理由B
私どもは、子供を育てるにあたり、心身ともに健康で、まっすぐ育って欲しいと願ってまいりました。なるべく本人の考えを大切にし、自分で考え、行動させ、終わるまで、口出しせずに努めてまいりました。躾は厳しく、人に迷惑をかけないよう、自分がされて嫌なことはしないよう、常に言い聞かせております。もともと誰とでも仲良く遊ぶことができましたが、最近では、自分の気持ちを相手に素直に伝えられるようになり、お友達との関係がスムーズになりました。息子に合う学校は「個」を重視される御校しかないと思い志願いたしました。
志望理由AとB、それぞれにどんな印象を持ちましたか? 面接官というのは、願書に書かれた内容はむろん重視しますが、同時に、こういう文章を書く人はどんな人だろうと想像しながら読むケースが多いのです。いわば「願書の第一印象」です。そのときの印象が面接に大きく影響することは言う間でもありません。
志望理由Aの場合、「社会が直面している深刻な問題の解決に取り組み、新たな社会価値を生み出すことができるような人になって欲しい」そのために「高い学力と伝統的な宗教哲学に基づく優れた人格形成、社会奉仕の精神を教育方針とされている貴校で」‥‥まあ、真剣勝負にたとえると、真っ向上段から切り込まれたようなものです。思わず身構えてしまう面接官も少なくないのではないでしょうか。
その場合、面接官によってはシビアな質問が出る可能性もあります。「お子さんが社会に巣立ったとき、その時代の社会が直面している深刻な問題とは何だと思いますか」とか「新たな社会価値を生み出すことができるような人とは具体的にどういう人だとお考えですか」などと聞かれても、答えにくいでしょうね。
一方、志望理由Bは、どうでしょうか。むずかしい言葉遣いはありません。それに話し言葉に近い文章ですから、とにかくわかりやすいですね。しかも、「なるべく本人の考えを大切にし、自分で考え、行動させ、終わるまで、口出しせずに努めて」などと、かなりレベルの高い目的意識をもって子育てをしてきたことが容易に想像できます。思わず、うまいなあと感心させられる志望理由です。好意的な一問一答になると思います。
ついでですが、志望理由Bで感心させられるのは、「まっすぐ育ってほしい」というフレーズです。この言葉には、ウソはつかない、ズルはしない、お友達にいじわるをしない、思いやりがある、正しいと思ったことはやり抜く、ルールを守る‥‥などのイメージを読み手に与えます。具体的なことを書かなくても、こういうことだろうなと読み手がかってに想像してくれます。
|