●幼稚舎に合格した子に共通項はなかった
幼稚舎に合格するのはどんな子なのか。明朗快活、動作がキビキビしている、何事にも積極的に取り組む、リーダーシップがある‥‥一口で言えば、「ひかっている子」が、幼稚舎に合格するタイプといわれていました。しかし、今回12人のお母さん方の話を聞くと、ちょっと違うかなという印象を持ちました。わずか12人の例では、サンプルとして何も意味をもたないという批判が出るかもしれません。しかし、わずか12人のサンプルでも意外な結果が出たのです。
各幼児教室からお母さん方を紹介してもらう際には、何の条件(男児だけとか兄や姉が幼稚舎に在学しているなど)もつけていません。「インタビューに応じていただけるならどなたでもけっこうです」とお願いしています。インタビュー原稿を読むと、何人かは「この子は合格して当たり前だろうな」というケースがあります。しかし、幼稚舎向きというよりは、「どの学校でもほしいと思う子」という程度のニュアンスです。
一方、こういうケースもあります。
「一見すると女子校タイプの子です。周りからも幼稚舎タイプではないと言われていました。屈託のない性格とかアクティブに振る舞っていたわけではありませんでした」
「何でも無防備に、興味があれば果敢に挑戦するという子ではありません。まずはお友達がやるのを観察して、物事を把握してから行動する子です」(事例4)
「幼児教室に入った当初は、すぐ泣き出すし、それにわがままでした。言葉数も少なかったですね。絵を描かせても上手ではないし、プリント問題をやらせても全然できませんでした」(事例6)
「人と話すことが苦手で、家族以外の人から話しかけられると黙ってしまう子でした。祖父から何か質問されても、すぐに答えられる子ではなかったんです。じっくり考えて、うなずくだけのときも度々ありました」(事例8)
お母さん方には、お子さんの性格、長所短所をお伺いしていますが、匿名ですから、ありのままをお話しいただけたと思います。中には、もし、面接(幼稚舎では面接はありませんが)で不用意に同じようなことを話したら致命傷になると思えるようなケースもありました。しかし、入試では、そうした「受験に不利な性格や短所」が試験官の目にとまるケースはほとんどないのが実態です。
というのも、ほとんどの子どもは、考査の最中に先生から話しかけられれば正しい姿勢できちんと答えられるし、「です、ます」程度の丁寧語は使えます。集団行動のときにどんな振る舞いをしたら目立つか、試験官の好感を得られるか、先生から質問されたら真っ先に手をあげたほうがいいことなども教えられています。絵画についても、構図の決め方、線の引き方、色の使い方まで「練習」しています。
ですから、子どもの性格や長所短所で合否が左右されるケースはほとんどないと考えていいのです。以下、お母さん方が、わが子の性格や長所短所を発言した箇所をアットランダムに書き出してみます。ざっと目を通してください。幼稚舎に合格するタイプということは一目瞭然です。
★事例1(男児)
「長所は、元気で明るいところです。みんなで何かを作るときは、中心的なリーダーではないけれど周りを見ながら、みんなに『ねぇねぇ、こうしよう』といった役割をする子です」
★事例2(男児)
「明るく朗らかですね。笑顔を絶やさない子です。兄弟2人とも、明るく仲が良いので、いつも賑やかな感じです。親が自分で言うのも恥ずかしいのですが、とても利発な子だと思います」
「長所は、誰とでもすぐにうちとけられることです。体も大きいので、自然とクラスの中でみんなのまとめ役になるようです」
「(短所は)一度集中してしまうと、のめりこみすぎてしまうところでしょうか。もうちょっと周りの声に耳を傾けられるようになってもらうといいのですが‥‥。それからやはり長男だからでしょうか、甘えん坊ですね」
「息子は、エンジンがかかるまでに時間がかかるタイプです。また、性格的に集中して一つのことに取り組みたいと考えるようです。だから、始める前にここまでやったら遊ぼうねと、しっかりと区切りをつけることを心がけました。ただ、本人のなかで、やらなきゃいけないと理解できていたので、口うるさく「あれをしなさい、これをしなさい」と尻を叩くようなことは控えました。自分から率先して勉強してくれていました」
「本人も負けず嫌いなので、必死になっていました」
「(受験のプレッシャーは)全くなかったと思います。受験をする自覚はあるんですが、それが重圧にはなっていなかったようです。逆にモチベーションが、とても上がっていましたね」
「(模擬試験の)結果が出ると自分から『何番?』と聞いて来ました」
「スランプは一度もありませんでした。常に精神状態も良く、上昇気流に乗っていました。多分、本人の性格に因るところが大きいと思います」
「細かいことを気にしないんですよね。本当に、『もっと気にしなさい』と言いたくなるくらい、大らかというか鈍いんですよ(笑)。そういう性格が、良い方向に向かったんだと思います。おそらく本人のなかにはスランプというもの自体、存在していないと思います」
★事例3(女児)
「長所は、どんな時でも物怖じせず、積極的に行動できるところです。短所は時間の感覚がずれているところです」
★事例4(女児)
「一見すると女子校タイプの子です。周りからも幼稚舎タイプではないと言われていました。屈託のない性格とかアクティブに振る舞っていたわけではありませんでした」
「何でも無防備に、興味があれば果敢に挑戦するという子ではありません。まずはお友達がやるのを観察して、物事を把握してから行動する子です」
★事例5(男児)
「息子はとても活発で危険なこともします。実家のソファーの上で飛び跳ねたときは、『やっていいことなのか良く考えなさい』とよく叱っていました。『いい加減にしなさい』と強く言うと、少しぐずってソファーから降りますが、また時間が経つと、やり始めてしまうこともありました」
「長所は、好奇心があって元気、根は真面目です。短所は内弁慶なところです。それに、長所とも短所ともとれることがあって、何かを始めると、やり遂げるまで止めようとしません。何かやっている途中で食事の時間が来ても、なかなか気持ちを切り替えられなくて、ぐずってしまうことがありましたね」
「本当に自分がやりたいと思ったことは、夢中になってする子です。そういうときに食事の時間よと言っても『まだ終わってない』と返事をしていました。私が『いい加減にしなさい』と注意をすると、泣いて別の部屋に走っていくこともありました」
「そこで何か言っても、火に油を注ぐようなものですので、ほっておきます。泣き疲れて、クールダウンすれば戻ってきて謝りますから」
★事例6(男児)
「幼児教室に入った当初は、すぐ泣き出すし、それにわがままでした。言葉数も少なかったですね。絵を描かせても上手ではないし、プリント問題をやらせても全然できませんでした。でも、体を動かすことは好きだし、それは良くできました」
「長所は天真爛漫なところです。あまり細かいことは気にしないタイプです。短所は、人見知りが強いところでしょうか。初めての物事や人に対してかなり警戒心が強くて、口を開こうとしません。おじいちゃんおばあちゃんとも打ちとけるまでに時間がかかりました」
「癇癪を起こしてテレビにジュースをかけたり、買ってあげたばかりのおもちゃを水の中に入れたりすることもありました。おもちゃの車が好きで、走らせて遊んでいるのはいいのですが、少し気に食わないと、それを投げたりしてしまう。壁にバーッと鉛筆で落書きもされました」
「床や壁は汚れて大変でしたね。鉛筆だけは絵を描くために出していて、クレヨンやペンは壁に落書きをされたら消しにくいので隠していましたが、本当に、ありとあらゆるいたずらをされました」
★事例7(女児)
「声が大きくて、みんなの先頭を走っていくタイプの女の子です。わりとどこへ行っても平気な子です」
「娘は人見知りをしない子なので、同年代のお友達がたくさんいるというだけで嬉しくなっていたと思います」
★事例8(男児)
「人見知りする子でした。大人しくて自分を表現することが苦手だったと思います」
「人と話すことが苦手で、家族以外の人から話しかけられると黙ってしまう子でした。祖父から何か質問されても、すぐに答えられる子ではなかったんです。じっくり考えて、うなずくだけのときも度々ありました」
★事例9(男児)
「息子の長所は、協調性があってやさしいところです。短所は、恥ずかしがりやのところです。恥ずかしがると緊張して、いつもの自分が出せなくなっていました。特に大人と話す場面になると恥ずかしがっていました。久しぶりに会う親戚や友達のお母さんとは挨拶もできず、話しかけられてもボソボソと返事をする子でした。少し横柄な子に見えていたかもしれません。そういうところは意識して直すように努力させたのですが、難しかったですね」
「音楽にあわせてスキップをすることができませんでした。スキップだけならできたのですが、リズムに合わせて手を叩きながらのスキップになるとできなくなっていました。息子はとても恥ずかしがり屋で、他の子のお母さんが見ている前で失敗することをすごく嫌がっていました。それで最初のうちは上手くいかないと泣いていました」
「息子はそういうとき(泣いたとき)に限って私の顔を見ないんですよ。泣いてしまった自分が悔しいというか、助けは求めない子でしたね。私もあえて見て見ぬふりをしていました。一人で涙を拭いて、またみんなの所に戻って行きました。授業が終わったときに、息子に「大丈夫だった?」と聞きましたけど、その頃はもう気にしていない感じでした。男の子だからかもしれませんが、あまり母親からベタベタされるのは好きじゃないみたいでした(笑)」