連載企画 願書・面接資料の書き方

第4回


誰が読むのか。何のために読むのか。この2つがポイント

ある幼児教室では、入室したときに、お母さん方に下記のようなテーマで「作文」をお願いしています。どれも面接でよく聞かれる項目です。願書や調査票の記入項目になっている学校もあります。入試直前になって、模範解答をつくり、一夜漬けで覚えればいいという問題でないことはご理解いただけると思います。子どもの名前には親のどんな気持ちや願いが込められているか‥‥大袈裟なようですが、こういったことを考えることから受験はスタートしています。

「お子様の名前には、ご両親のどんな気持ちが込められていますか」
「お子様が生まれたとき、どんな気持ちでしたか?」
「お子様にはどんなよいところがありますか」
「これまで子育てをしていて感動したことは何ですか」
「春休み中、お子様をほめてあげたことは何ですか」

A4版の用紙に、それぞれ4〜7行のスペースに回答するというものです。1行あたり約40字として160字から250字です。話してくださいといわれれば、何とかなりそうですが、書くとなったら途方に暮れるお母さんも少なくないと思います。ちょっと話がわき道にそれるようですが、子どもの長所は何かというテーマで話を進めてみます。「話す」のであれば、簡単ですね。こんな感じになるでしょうか。

そりゃ、もう、とにかく元気な子です。幼稚園では3年間1日も休んでいません。風邪を引いて、ちょっとくらい熱があっても飛び回っているほどです。この間は、幼稚園から帰ってきてから珍しくボンヤリしていました。熱っぽい顔をしていましたから、どこか具合が悪いの? って聞いたら何でもないと言います。それでもと思って熱を計ったら、なんと39度8分もありました。びっくりして風邪薬を飲ませて無理矢理寝かせたほどです。以前、鉄棒から落ちて額にケガをしたときがありました。お医者さまから1日くらい寝かせたほうがいいでしょうといわれたんですが、翌日の朝になったら、どうしても幼稚園に行くと言って、包帯を鉢巻きのようにグルグル巻いて行ったほどです。それから、とても好奇心の強い子です。駅から家まで、大人の足なら4〜5分の距離なんですが、この子と一緒に歩くと、30分以上かかります。なぜって‥‥。アリを見つければ、そこに座り込んでしまうし、蝶々が飛んでいれば追いかけて行こうとします。3歳のとき、2匹のアリが大きなお菓子のかけらを運んでいるのを見つけて、なぜアリは自分の体より大きなものを運べるのかとしつこく訊かれて閉口しました。一時期、この子のなぜ? どうして? にずいぶん悩まされました。

話すのであれば、こんに簡単なのに、200字にまとめるとなったら、むずかしいですね。ちなみに上の文章は約500字です。200字というと、上の文章を半分以上カットしなければなりません。200字に整理しても、それでいいというわけにはいきません。なぜ、それではいけないかというと、願書というのは、読み手を意識して書く必要があるからです。読み手のいない文章は日記くらいなものです。

誰が読むのか。何のために読むのか。この2つをしっかりと頭の中にたたき込んでください。入学願書であれば、入試を担当する教員と校長先生でしょう。校長先生が読むのだから何とかうちの子を入学させていただきたいと心を込めて書く必要があります。そして、何のために読むのか。ここが大事です。「どんなお子さんかを知りたい」ために読むのではありません。「この子はわが校の生徒としてふさわしいか」「現場の教師が教えやすいか」、学校によってチェック・ポイントはいろいろあると思いますが、要するに、そういうことを知りたいのです。

読み手がどう思うかを考えて書かなければなりません。たとえば、お子さんの名前にしても、ご主人と意見が食い違ってモメたとか、両方の親がしゃしゃり出てきて収拾がつかなくなって、とうとうサイコロで決めたなんてことは、かりにそれが本当だとしてもそんなことは書けません。「愛子」だったら、これこれこんな理由で、「愛」という文字を入れた名前にするのが私ども夫婦の念願でしたなどと、それらしい内容にする必要があります。「それらしい内容」というのは、学校によって意識的に違ってくるでしょう。

ペーパーテストを重視する学校であれば、そもそも子どもの名前の由来などはどうでもいいと考えているでしょうし、かりに、願書に記入欄があったとしてもそんなに神経質になる必要はありません。当たり障りのない内容でいいのです。でも、いわゆる「お嬢様タイプの子」がほしい学校ではそうもいかないでしょう。「何のために読むのか」を意識して書かなければイケナイという理由はそこにあります。


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