「バカじゃないの! 何で同じところを何度も間違えるの! この言葉は絶対に言ってはいけないとずっと我慢してきたんですが、ついに言っちゃいました。受験日の1か月くらい前だったと思います。突然、子供がやる気をなくし、それまで簡単にできていたペーパーができなくなったんです。スランプですね。お友達はみんな追い込みに入っている時期ですから焦りました。このため、子供の顔を見れば文句ばかり言っていました。とうとう子供から叱られました。お母さん、6歳の子供にどうしろっていうのと(笑)」
このお母さんは、幼児教室の先生から、2週間、家でペーパーを勉強させることを禁じられたそうです。受験直前に何もするなと言われたのですから、お母さんは、かなりの「重症」だったようです。「母親が保護観察処分を受けたんです」とあっけらかんと語っていました。
たしかに、「バカ」は禁句です。でも、たとえ感情に走って出た言葉だったとしても、禁句というほど神経質に考えなくてもいいと思います。バカだと言われて落ち込むほど、子供はヤワではありません。現に、このお母さんの場合、「6歳の子供に何をしろというのか」と逆襲されているほどです。たくましい子供ですね。親子が何でも言い合えるというプラス面が大きいのではないでしょうか。6歳なら、親の本音と建て前は見抜きます。隠し事をしても、うすうす感づきます。お互いに、「いい母親」「いい子」を演じなくてもいいという親子関係はすばらしいと思います。
ストレスに悩んだお母さんの話をいろいろと聞いています。お子さんがチックになったときに、取り返しのつかない間違いをしたのではないかと悩んだお母さんもいます。初めて、子供をぶったときに、罪悪感に苛まれて夜も眠れなかったという話も聞きます。受験が終わるまでの1年間、「心が平静だった日はありません」というのが、おおかたのお母さんの感想です。そう語るお母さん方に共通するのが、お子さんの受験に一生懸命だということです。
小学校受験は母親次第といわれています。受験に失敗すれば、それこそ母親失格といわれかねません。これでは、お母さんは必死で頑張らざるを得ません。こんな言い方こそ禁句にしなけりゃいけません。
「完璧な母親」でありたいと思えば、どうしてもお子さんの一挙手一投足に目が行き届きます。見れば、口を出したくなります。声も大きくなるでしょう。イライラも募ります。受験しないのであれば大目に見てあげられることでも、見逃せないようになります。
こうしなさい、ああしなさい、それはダメ、勉強しなさい、何度同じことを言わせるの‥‥やさしかったママの口から出るのは、そんな言葉ばかりになってしまいます。恐いのは、そういう母親ではイケナイと我慢したり罪悪感をもってしまうことです。誤解を恐れず、教育専門家からはお叱りをいただくのは承知で申し上げますが、いつも、いいママを演じる必要はありません。たまには感情的に叱りとばしてもいいし、頭をこづいてもいいと思いますよ。
お母さんだけではありません。明け方の3時までお酒を飲んでいたため、二日酔いの状態で面接を受けたという「困ったお父さん」もいました。お母さんとお子さんはカンカンに怒ったそうです。当然ですよね。そのお父さんはどうしても酒席をはずせない事情があったことを、汗だくだくになりながら弁明したようです。その態度が好感をもたれたのかどうかわかりませんが、横浜雙葉に合格しています。お父さんの失点をカバーするほど、お子さんのデキがとてもよかったのかもしれませんが‥‥。
あるお父さん(医師)は、志望動機を聞かれて、「妻が決めました」。お休みの日はお子さんとどう過ごしますかという質問に対して、「忙しくて土日は寝ています」と答えたそうです。あまり感心する対応ではありません。でも、合格していました。
乱暴な言い方ですが、「困った母親」「困った父親」でもいいのです。ちょっとくらい難点のあるママとパパでも大丈夫です。とにかく完璧な親を目指さない──これが受験を無事乗り切るコツです。
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