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面接対策・プロのアドバイス

尾形圭子さん略歴

ファインコミュニケーションズ代表。企業向けの社員教育、接客マナー、電話応対研修などを手がけるほか、幼児期における家庭環境のあり方、親と子のコミュニケーションの重要性などを講演・執筆活動を通して提言。ボイストレーニングや話し方、歩き方、表現法などの指導例も多数。連絡先045-714-2505




●第一印象は6〜10秒でつくられる

――尾形さんは、学生や社会人を対象にした面接指導を数多く手がけていますが、面接に臨む際の基本的な心構えは何ですか?

尾形 採用試験の面接も小学校受験の面接も基本は同じだと思います。面接でもっとも大事なことは何ですかとお聞きすると、みなさん、謙虚な姿勢、熱意、平常心‥‥とおっしゃいますが、むろんどれもこれも大切です。

しかし、面接の成否は第一印象でほぼ決まるのが現実です。何回も何回も模擬練習をして、どんな質問に対しても完璧に答えられるだけの準備をしたとしても、一問一答の前に、面接担当者は見た目で「心証」をあらかた固めてしまっているのです。

部屋に入ってきた親子を見た瞬間、実際に、こういう言い方をしているかどうかは知りませんが、内心では「文句なしに合格!」「とりあえず話を聞いてから判断する」「みんなの評価が割れるケース」「たとえ子どもの成績がトップでも不合格」‥‥第一印象でそこまで踏み込んだふるい分けをしています。面接試験とはそういうものだということを、まず、承知しておいてください。

――第一印象を固めるのに、どれくらいの時間がかっていますか?

尾形 ノックをしてドアを開け、部屋の中に入って、「○○です」と名乗りをあげて、「よろしくお願いします」とお辞儀をする間ですから、せいぜい6〜10秒くらいです。それで第一印象がほぼ決まります。

第一印象を決める要素は、身だしなみや表情など、目から入ってくる情報が55%、声のトーンや話すスピード等の音声情報が38%、言葉使いと話の内容が7%――これがメラビアンの法則といわれているものですが、つまり、第一印象は見た目や耳に入ってくる感覚的なの印象で93%が決まります。ですから、髪型、服装、目線、お辞儀の仕方、姿勢や第一声などがても大事ということになります。

第一印象によって、基本的な質問の後につながる質問内容も変わることがあります。第一印象がきわめて良かった場合、つまり、この人(家族)は合格させたいと思ったときは、面接が始まってからの質問内容は第一印象の確認作業になりますから、かなり有利といえます。

逆に、第一印象が悪かったときは、この人はどういう人間なのかという警戒心を抱きますから、質問内容も厳しくなる可能性があります。たいていは、とくに良い印象も悪い印象もなく、後につづく質問によって心証を固めるということになります。

ですから、第一印象で悪い印象を与えてしまうと、かなり不利ということになります。一問一答で、かなりインパクトのあることを言わないと盛り返すのはむずかしいでしょう。

――見た目がぱっとしない人は不利ですね。

尾形 ええ。でも、第一印象が悪ければ必ず不利かというと、そんなことはありません。見た瞬間の印象はぱっとしなかったけれども、話をしているうちに評価が変わったというケースはたくさんあります。これが認識のプロセスによるものです。

また、熱意が表に出ないというタイプの人もいます。でも、2分3分と話をしているうちに熱意とか誠実さは相手に伝わってくるものです。ですから、かりに、外見に自信がなかったとしても不安をもつ必要はありません。わが子を何としてでもこの学校に入れたいという熱意があれば、自然と相手には伝わるものです。

ただ、それはその通りなんですが、実際は、第一印象の悪い人は損です。面接官は見た目で判断するようなことはしませんとは言いますが、それは建前です。人間である以上、見た目の印象が最終決定に影響を及ぼすことは避けられません。ですから、自分は相手にどんな印象を与えるのかを知ることはとても大事ですし、第一 印象をよくする努力は必要です。

●「ありのままを評価してください」という態度は危険

――自分という人間が初対面の相手にどんな印象を与えるのか、そうした発想をもっている人は少ないかもしれませんね。

尾形 ええ。面接はプレゼンテーションの場と割り切ったほうがいいと思います。幼稚園・小学校受験の面接というのは、自分だけでなくわが子や家族という商品を売り込む場です。わが子を商品に見立てることに抵抗があるかもしれません。「売り込む」という発想にも馴染めないかもしれませんが、そう考えないと、面接に勝ち抜く方策が出てきません。まず、自分という人間が初対面の相手にどんな印象を与えるのか、 そこをチェックすることが大事です。

「ありのまま」でいいという人がいますが、私は賛成できません。話し出したら止まらない夫、夫の言動にいちいち注釈をつける妻‥‥「ありのまま」をさらけ出すことは危険という親御さんもいると思いますよ(笑)。

1年も2年も頑張ってきたのです。わずか10分足らずの面接でそれまでの努力をふいにしてはなりません。「ありのままの私たちを評価してください」という受け身の対応では、それでうまくいけばいいけれど失敗したときは、この間の努力は何だったのかと悔いが残ります。

この親に育てられた子どもなら、ぜひ入学してほしいと思わせなければなりません。「ありのまま」で通用する家族というのは、祖父も父親も代々私学出身者だとか、何代もつづいた名家というケースであって、そうでない普通の家庭であれば、それこそ「一世一代の演技」が必要なのです。

ビジネスの世界では、面接や面談の場は、いかに自分や商品、あるいは企画を高く売り込むか、虚々実々の駆 け引きの場です。父親の多くは、そういう世界で生きているはずです。小学校受験の面接でも、それと同じとはあえて申し上げませんが、それなりの戦略はあったほうがいいと思います。

●「鏡に映った自分」は、どんな人ですか?

――第一印象をよくする方法はありますか?

尾形 まあ、役者さんだったら、10分くらいなら、理想的な父親・母親像を完璧に演じることはできるでしょうが‥‥。よく私がみなさんにお勧めしているのは鏡を見ることです。男性でも、日に何度かは鏡を見ていると思います。でも、髪は乱れていないか、鼻毛がハミ出ていないか、口の周りや歯茎がきれいになっているかを確かめる程度のことで、「鏡に映った自分はどんな人間か」という目でチェックするということはほとんど意識していないと思います。

もし、鏡に映っているあなたがセールスマンだったら、玄関のドアを開けて家の中に招き入れますか? それとも門前払いです か?「鏡に映った自分」のチェック項目はいろいろあります。

・疲れた顔をしていませんか?
・イキイキとしていますか?
・神経質そうな印象を与えていませんか?
・穏やかな表情をしていますか?

どうでしょうか。そんなことをしても、いきなり「やさしいママ」とか「活気にあふれた父親」に変身できるはずもない。神経質そうな印象を与えてしまうのは、生まれつきだからしようがない‥‥などと反論されそうです。

しかし、顔の造作を変えていただきたいというのではありません。相手に与える印象をちょっと変えるだけでいいのです。髪型一つで、相手に与える印象は変わります。ファッションを変えただけで別人みたいなどと言われたことはありませんか? 「何かうれしいことがあった?」と聞かれたこともあると思います。

見た目の印象を変えるというのはそんなにむずかしく考えることではないのです。外見を変えると気持ちも変わります。たとえば、「表情のチェック」です。鏡の中の自分を見て、「いい顔だな」と思えるかどうか。にっこり笑って見てください。いい笑顔ですか? 

アルバムを見て、どんなときにいい表情をしていたかを思い出してください。目の輝きはどうか、目つきは、口元は‥‥自分で研究していただくしかありません。たとえ、前夜、飲み過ぎていたとしても、元気ハツラツとしているか、悩み事があったとしても、明るい表情になっているか、チェックしたいことはいろいろあります。

業界でトップセールスマンとして知られる人は、毎朝、家を出る前に鏡の前で5分から10分間、いい顔のチェックをするといいます。そんな子供だましみたいなことで‥‥と思うかもしれませんが、人間というのは、 テーブルクロスやカーテンを付け替えただけで気分がすっきりするものです。好きな買い物をしたら、鬱々と気分がすっきりと解消したなんて経験は誰にでもあります。気分というのは、そんなものです。快活であれば自然とイキイキとした表情になります。



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