連載企画 願書・面接資料の書き方

第6回


「話すように書く」

願書の書き方の連載を始めてから、何人かの読者から、作文が苦手で困っています。短期間で上手になる方法はありませんか――というお便りをいただきました。学校説明会に行き、気がついたことや感心したことなどをたくさんメモしてみたけれど、どう文章にまとめていいかわからないといいます。

短期間で作文の苦手意識をなくす方法は一つしかありません。「書く」しかないのです。何回も何回も書いているうちに、自然と苦手意識が薄れてきて、そのうち、そうか、こう書けばいいんだな、ここは無駄だなと「書くコツ」がわかるようになります。

ある幼児教室では、保護者が学校説明会に参加したときは、必ず感想文を書いてもらっています。大学ノートに2〜3ページ。校長先生の話に対する感想、授業参観で感心したこと、教職員の応対ぶりはどうだったかなど、「どんなことでもいいから、そのときに気づいたことをすべて書いてもらっている」そうです。

そのいくつかを読んで感心したことは、素直でとても読みやすい文章だったことです。幼児教室の先生に、どんな文章指導をしているのかとお訊きしたら、「何もしていないけれど、平易に相手にわかるように書くということだけは注意しました」と言っていました。わかりやすい文章、そして、こちらの言いたいことが読み手に正確に伝わる、これがいい文章の必須条件です。

文章に凝ったり、言い回しに苦労する必要はありません。「こちらの言いたいことが相手に正確に伝わること」だけを意識すればいいのです。話すのなら簡単だけれど‥‥とおっしゃる人もいると思いますが、とりあえずは、「話すように書く」ことから始めてください。学校説明会のとき、たまたま校庭で見た光景が印象に残っていたという場合です。

学校説明会のとき、上級生とたぶん1年生と思いますが、中庭で一緒にお弁当を食べていました。上級生のお姉さんが自分のお弁当箱からおかずを下級生にあげていました。下級生はペコンと頭を下げました。「これ、おいしいわよ」「ありがとうございます」そんなやりとりが聞こえてくるようで、とてもほほえましく、いい光景でした。先ほど校長先生は、6年生には新入生のお世話をするように指導していますとおっしゃっていたけれど、とてもいいことだと思いました。娘は一人っ子です。甘えることは知っていても、甘えさせるという経験はありません。相手の立場にたつとか、思いやる、やさしい心をもつといったことの大切さは、頭のなかでは理解していても、自分がその場に立った経験がほとんどないのです。「相手の立場に立つ」には、自分を抑えなければならないこともあるし、嫌だとか自分が損すると思ってもそうしなければいけないこともあります。決して、いい気分になれるとばかりはいえません。この学校に入って、やがてお姉さんの立場になり下級生のお世話をするようになって初めて、相手の立場に立つとか、相手を思いやるとはどういうことかが理解できるのだと思います。こういう環境でわが子の成長を見守ってあげられたらいいなと思います。

「話すように書く」と、上のようになります。「校長先生のお話」「授業参観」など、テーマを変えて、書いて見てください。何回も何回も練習してください。そのうち、ここの言い回しはわかりにくいとか、カットしたほうがすっきりする、もっと平易な言葉にしたほうがいいなど、文章を整理するコツが自然とわかるようになります。


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