志望理由が曖昧になる原因は、要するに、学校側に「この子・この家族を受け入れたい」と思わせる準備をしてこなかったためです。というと、そんな馬鹿なと思うかもしれません。1年前から幼児教室に通わせたり、それも1か所だけでなく、大手と個人塾のほか体操教室にも通わせたし、自宅では毎日1時間もペーパーの勉強をした、土日には、水族館にも行った、動物園にも‥‥とおっしゃりたいでしょうが、それを面接で力説する保護者はいないでしょう。学校が好ましいと思っている子ども像は、そういう準備をしてきた子どもではないとわかっているからです。どんな準備をしてきた子どもを好ましいと思っているのか‥‥これも、みなさん、わかっていると思います。
補欠合格を辞退して、もう一度、挑戦したいと2次試験を受験して、今度はすんなり合格した子どもがいます。補欠合格を辞退した理由は、子どもが補欠はイヤだと言い出したためです。ペーパーテストができなかったことや面接で泣き出してしまったことに対して、子ども心にも釈然としなかったのかもしれません。学校側は幼児教室に通わずに、しかも準備期間2週間で試験を受けたということがわかっていましたから、ペーパーテストの成績がよくなかったことも、面接で泣き出したことも「大目に見た」そうです。というのも、面接以外の場所では、子どもがとてもイキイキとしていたからです。試験官の中から「落とすのは惜しい」という意見が出て、補欠に回したようです。学校側がこの子をほしがったわけが何となく推測できます。
たとえば10人の子ども達を集めて、積み木をできるだけ高く積みなさいというテストをすれば、1〜10番まで順位をつけることができるそうです。真っ先に積み木を積み始める子、それを真似る子、動作がノロい子、ぼんやりと座り込んだままの子、隣の子と小競り合いをする子、泣き出す子、その子を慰める子など、10分もすると、子ども達の「自然の姿」が出てくるそうです。ペーパーテストや行動観察の出題例を見ても、机上の勉強だけでは対応できない問題が増えています。
ペーパーテストの際に、試験官が1人ひとりの子どもに対して、「なぜそこに○をつけたの?」「どうしてその答になったのかな?」と質問する学校もあります。そのときに子どもがどんな答え方をするかをチェックしています。ペーパーテストの結果よりも一問一答の際の態度、言葉遣いなどを重視しているそうです。
ある学校では、いろいろな音を聞かせて、森の中から聞こえる音はどれかというテストをしています。お祭りのときに見かけるお店はどれですかという問題もありました。石の下にいる虫はどれですか、土の中に家をもっているのは‥‥何となく出題者の意図が推測できます。
こうして見てくると、受験のために必要な準備とは何か、幼児教室に通わせていれば、それで十分とはいえないなとご理解いただけると思います。受験を思い立ってから1年か1年半の間に、幼児教室に通わせる以外に、どんな考えの下に、どんなことに気をつけて子どもを育ててきたか、学校が知りたいのは、まさにそこです。それが志望理由に集約されるのです。
志望理由を書くスペースは数行ですむから、願書の締め切り前で十分間に合うというわけにはいきません。というより、もっと積極的に、志望理由を決めてから受験準備をすると発想を切り替えてもいいと思います。「志望理由を決めてから」というのは、わが子がどんな人間になってほしいのか、どんな人生を歩いてほしいのか、そのために今、親として何をしてやれるかを考えるということです。