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麹町慶進会 島村美輝さん


第6回


●ほめ過ぎるな、叱り過ぎるな
 
最近の若いご両親の欠点は「ほめ過ぎ叱り過ぎ」です。他愛もないことですぐほめる。例えばペーパーがちょっとできれば「良かったね」。子どもに「ママにほめられたことある?」と聞くと、勉強ができたからほめられたという子が多いのです。

そうじゃなく、一生懸命にやったらこんなことができたとか、例えば「お片付けをしていたらママが探していた指輪を見つけたよ」と生活に密着したことでほめられるのであればいいのですが、ペーパーがよくできたとか、母親が言う通りにしたらほめられたというのは、あまり感心できません。同様に、ささいなことで叱ることも多いようです。それはダメ、いけません! 何回言ったらわかるの! いい加減にしなさい! 

年長になると、子どもは母親の小言の9割は聞き流します。また何か怒っていると思うだけです。ちょっとしたことでほめられても、ほめられることに慣れていますからあまり喜びません。母親を喜ばせようと思って、コレできるよと得意げに何かをします。4〜5歳くらいになると、それぐらいの知恵はあります。母親なり父親がたいへん子どもっぽい方、いわゆる大人になりきれていない親の場合は、子どもに操作されてしまいます。年長児はそれぐらい発達しています。

赤ちゃんのときに泣くのは本能です。しかし、2、3歳ぐらいになると、今泣いておこうと思えば自然に泣きます。泣けば親がオロオロする、どうしたと抱っこしてくれるとわかっているのです。役者と同じように、子どもは演技するのです。

「物を与えすぎる」ということも、小学校受験にはあまりプラスにはなりません。むしろ弊害が多いのです。本をたくさん与えると本を読むようになるかというと、最初は喜びますが、そのうち本には見向きもしなくなります。興味を示すのは、新しく買ってくれた本だけです。与え過ぎてしまうと、目先がかわるだけで、本当の楽しみ方を理解できなくなります。

文字は、親が教えなくても自然に覚えていきます。基本は読み聞かせにあるのは当然ですが、最近の子どもは、就学前に字を読めるようになります。子どもの欲求から字を覚えていくのです。子どもは読みたいから字を覚えるのです。

子どもの本来の欲求に沿って与えるのがいちばんいいのです。与え過ぎると子どもは飽和状態を起こして伸びなくなります。そのバランスを考えてほしいのです。食べ物でも子どもに好き嫌いが多くなるのは、子どもの体のためと思っていろいろな料理をつくり過ぎるのが原因です。食事でもおやつでも与え過ぎれば、好きなものだけを食べるのが子どもです。栄養のバランスは考えません。

人間は何も食べるものがなくなると、腐りかけのものでも食べてしまう。それほどの飢餓感は必要ないけれど、子どもをそういうような状態に常においておくことも大事です。

むろん、その見極めがむずかしいことはたしかです。子どもがほしがる玩具というのは、大人が見て、一時間も遊べば飽きるだろうというおもちゃに先に目がいくのです。子どもの本でも、年齢や発達の段階に合わせた本を選んで与えてほしいのです。

絵が多くあっても良いのです。親は子どもになるべく早く字を読んでほしいとか、英才的な教育をしようと思って、字がたくさんある本を選ぶ。この字が読めたとか、百人一首が理解できたとか、親が勝手に喜んでも子どものためにはなんにもならないのです。

●受験よりまず生活ありき
 
今までの日本的な考えでは、父親は外で働き、母親は家で家事をするというパターンが多かったのですが、私はそれだけがすべてとは思っていません。子どもが三歳か四歳までは、お母さんが母親業に専念できることが理想ですが、女性が社会に出て活躍できる時代です。これからの時代は労働人口不足の問題もあって、女性の社会進出はますます進むと思います。

父親は外でお金を稼いできて、子どもの塾やお稽古事の資金を提供するだけではいけません。母親が選んできた本、塾などを、本当にいいものなのか最終的に見極めなくてはなりません。そうしたことも父親の役割です。つまり、父親は母親がチョイスしたものを、もう一度客観的に判断してアドバイスしていく能力が必要です。

最近感じることは、大人になりきれない父親が少なくないということです。子どもが子どもを育てているようなものです。どうしつけたらいいか、何をどう教えたらいいか、方法論を見つけられないのです。父親にはもっと大人になってほしいですね。奥さんや子どもがやっていることを客観的に見て、行き過ぎだったらブレーキをかける、間違った選択だったらそれを正す、そうした男親としての冷静な目をもってほしいと思います。

お子さんが小学校受験の時期というと、お父さんはちょうど仕事に脂が乗っている年代です。否応なく仕事人間を余儀なくされることと思います。せめて子どもの受験が終わるまでは残業もやめて、土日のゴルフも控えてほしいと奥さんから懇請されることが多いと思うのですが、そんな必要はありません。子どもの調子がおかしいときや、学校選びなど、ここが大事という場面で登場してくれればいいのです。

面接の時に、「パパは日曜日も忙しくて遊んでくれません」と子どもが答えたからといって、それが原因で落ちるようなことはありません。受験のために無理して子どもと遊ぶというのは本末転倒です。父親と子どもの本当のかかわり方はどうなのか、その辺は学校側も見抜いています。受験よりもまず生活ありきです。

受験まで二年間、毎週末を父親と一緒に過ごすようスケジュールを作っているような人や、住む場所を変えたりするなど、受験のために無理をして親のライフスタイルを変えるのは、子どもにとってちっともよくありません。これほどまでに努力しているという親の自己満足だけです。

面接で「休みの日にお父さんとどこかへ行きましたか」と聞かれて、子供が「お父さんは忙しくて一緒に遊べばせんでした」と答えてもまったく差し障りはありません。そのことに対してどのような見識をもち、母親にカバーさせているかがポイントです。

そういう質問のために、わざわざスケジュールを組んであちこち行くという必要はありません。一流校といわれている学校に、毎晩遅くまで働いている父親の子どもが多数入学しているのを見てもわかることです。父親が無理をして汗をふきふき動物園に子どもをつれていっても、動物園のベンチで寝ているだけでしょう。とにかく、受験のために親の生活を無理に変えようとする親が少なくありません。幼児教室がそう教え込ませているケースもあるようです。

●塾をコロコロ変えるのは損 

そうしたことも含めて、私は私のところへ来る親御さんには、小学校受験に関する間違った考え方を一掃することから始めます。ケースによっては、私のところに通うのはこの子にとって良くないから、おやめなさいとアドバイスするときもあります。

例えば、勉強が大好きなんだけれど、行動観察系が弱い子どもがいたとします。ペーパーを中心とした勉強によって自分をつくり上げてきた子どもを、もう勉強はいいから行動観察だけをやりましょうといったら、その子どもはガタガタになってしまいます。

受験に合格させるのが親の目的なんですから、時間的に今私の所に通わせるのがよくないと判断したら、ここに通うのはおやめなさいとはっきり言います。むろん、そんなことをしたら経営的には損です。しかし、お断りすることがその子にとってはいちばん良いことです。

私のところでは夏期講習、春期講習は必修ですが、もし子供がどこか別の塾と重複して受けていても、その子にとってそれが一番良いのであれば私はそれで結構ですよと言います。

結果的にその子にとって一番良いことを選んであげれば良いのです。その子にとってよかれと思うことしかしたくない、これは教育者として当然のことです。子どもは大切な存在です。明らかにそれに反することをしたら、自分で自分を裏切ることになるからです。そこまでして仕事はしたくありません。それは本音でそう思っています。

いちばん心配なのは、二、三か月で塾をコロコロと変える親御さんの場合です。あそこがいいと聞くとあっちに行き、ここがいいと言われればこっちに行きという人は、受験に成功しません。そういう噂に振り回されるのは人間だから仕方がない面もありますが、親の不安に付け入る教室がないとは言いません。

小学校側は塾や幼児教室の手垢のついた子どもはほしくないと言います。小学校側は六年間で自分たちの教育をしたいのです。そのためのベースがしっかりできている子どもをほしいのです。すでに出来上がった子ではなく、これから大きく育てるためにバランスよく育った子を求めているのです。そこをよくご理解いただきたいのです。


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