はじめての幼稚園・小学校受験

第11回●「わが家の教育方針づくり」は家の設計図と同じ


来年受験を予定しているご両親にとって、目下の関心事は幼児教室探しでしょうか。あるいは、志望校の問題集を買ってきて、どんな問題が出るのかをいちおう頭の中に入れておいて、受験に臨む心構えを固めている‥‥そういう段階かと思います。そんなときに、1年先の願書の書き方の話では興味が薄いかもしれませんが、もう少しおつき合いください。

願書に書く志望理由はわずか数行です。文字数にして200字前後というケースが多く、志望校の教育方針とわが家の教育方針との接点を書けば、それでスペースはいっぱいになります。だから、締め切りの1か月前から準備すればいいと考えているかもしれませんが、そうではありません。

というのも、面接では、この数行の志望理由の中から質問の材料を決めているのです。たとえば、以下のような志望理由だったとしましょうか。

御校の教育のすばらしさは、御校の在校生の親や卒業生である複数の友人を通じて知りました。とくに学校説明会でお伺いした校長先生の「教育とは共育・協育」というお話には感動すら覚えました。躾をはじめ、家庭内でできることは、むろん、親の責任として教育するつもりですが、学校教育の場で学び、身につけなければならないことも多々あると存じます。御校のご指導の下、共に生き学んでいきたいと思い、志願いたしました。

この志望理由に対して、面接では何を聞かれるかというと、下の2つについては質問されることは少ないと思います。

A「本校の在校生の保護者や卒業生からどんなお話を聞きましたか?」
B「本校校長の話のどんな点に感動しましたか?」

Aについては、面接官にはあまり興味がありません。志望理由を聞けば、どの保護者も絶賛しするでしょうから、興味はないし、うんざりしているかもしれません。
Bについても、多くの学校は校長先生が面接をしますから、自分の話のどこに感動してくれたのかを聞きたがるかどうかです。それに学校説明会での校長先生の話というのは、「年齢相応に育っていればいい」とか「先取り教育をしないください」など、保護者に対する注文が少なくありません。このケースでも、「教育とは共育・協育」という校長先生のお話に感動した‥‥とありますが、そもそも「教育とは共育・協育」というのは、子どもの教育を学校任せにしないでくださいよ、協力してくださいよという、いわば、保護者に対して注文をつけているのです。それに「感動した」といわれても、「それはどうも‥‥」というしかありません。あえて、どんな点に感動しましたかと聞くのはバカらしいでしょう。

面接官の興味は、次の1点です。

C「家庭内でできる教育とは具体的にどんなことでしょうか」

どんな考え方の下に、どんな子育てをしてきたのか、面接官はそれを知りたいのです。志望理由には「躾をはじめ、家庭内でできること」と書いてありますが、その程度のことはできて当たり前という平凡な答だと、試験官の期待を裏切ることになります。

試験官は、「この子・この家族を受け入れるための材料」を面接で知りたがっているのです。そのためにCのような質問をするのです。ABにはあまり興味がないというのも、ABには、保護者の熱意はわかったとしても、「この子・この家族を受け入れるための材料」がないからです。

躾でも何でもいいのですが、面接官にアピールできるものをどれくらい用意できるか、それが面接の成否を大きく左右します。たとえば、躾であれば、「そこまでおやりになりましたか」と、面接官を感心させなければいけません。名前を呼ばれたらきちんと返事をする、食事のときはテレビを消す、父親が仕事にでかけるときは「いってらっしゃい」といえる‥‥この程度では面接官は驚かないと思います。

それでも、就学前の幼児期に必要なことは躾という一貫した考え方の下で、子どもを育ててきたというなら、それなりのアピールの仕方がありますが、受験のために、それも3か月くらい前から躾をやかましく言ってきたというのでは、簡単に見抜かれます。「躾を第一に育ててきました」と親が答えている側で、子どもが足をブラブラさせていたり、体をグニャグニャさせているという光景はそんなにめずらしいことではありません。「一夜漬けの躾ですか?」などと皮肉をいわれることはありませんが、せっかくの志望理由も面接官の心を動かすことはむずかしいでしょう。

幼稚園・小学校受験はお子さんの成績と保護者面接で合否が決まります。お子さんの援護射撃になるような面接にしたいというなら、まず、わが家の教育方針を決めるという作業が先決です。わが家の教育方針を決めるということは、家を建てるときの設計図のようなものです。いきなり幼児教室にお子さんを預けるというのは、図面なしで大工さんに家を建ててくださいというに等しいのです。設計図づくりにはたっぷりと時間をかけてください。




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