「わが子の長所短所」の書き方A表現の仕方の工夫
父親と母親の間で、ランダムに挙げた項目や事例のコンセンサスが取れた後は、長所と短所の振り分けにかかります。人間の性格は、ここから左が良いところ、ここから右が悪いところと決まっているわけではありません。複雑な人格が社会的な規範や常識から判断して長所と短所と分けられるものであって、同じ人間の人となりの側面であることには変わりありません。ですから、ひとつの性格も長所と短所の両面を持ち合わせていることが多いのです。
たとえば、「優しい」という性格。通常は長所と考えられますが、これは他者への思いやりの心が発揮されるときです。優しさが自分に向いたとき、自分に甘い、優柔不断である、というような短所につながっていく可能性もあります。また、「頑固」という性格は短所と捉えられるものです。人の意見を聞かず、ひとりよがりだという意味があるからです。しかしそれはまた同時に、物事に動じない、自分の信念を貫くという素晴らしい長所につながるものでもあります。
このように、ひとつの性格の側面も、反対側から見ればこうだということがいろいろとあります。実際に親が書き出し議論したなかでも、長所短所の両面を持つ事柄があると思います。それがわかってくると、子供の人間性が、よりひとつのまとまりと持ったものとして見えてくるのではないでしょうか。ウチの子って、こういう子だったんだ、と、俄然、一人の独立した人間像が浮かび上がってくると思います。ここまで来れば大きな前進だと言えると思います。
では、長所と短所を分類しましょう。
●粘り強くてしつこい性格は同じ側面から来ているのだろうけど、ここはやはり長所の「粘り強い」で行こう。具体例は、野球の練習を毎日自主的にしていることがいいだろう。
●お友達が多くて明るい性格は、おちゃらけている面もあるけれど、やはり長所として「友達づくりに積極的で、交友関係を大切にする子供」としよう。具体例は、公園などで初めて出会う子にも自分から声をかけて仲間づくりをし楽しく遊ぶことが好きだ、ということにしよう。
というように、長所のほうが比較的書きやすく、言葉も良いものが見つかりやすいと思います。
難しいのは短所です。子供を卑下したくはありませんし、必要以上に欠点を並べるのも気が進まないと思います。しかし、ここは客観性を持って、上手な表現を見つけたいところです。ポイントは、短所を書くだけではなく、その短所を本人ならびに親がどのように改善しようと努力しているか、ということを付け加えることです。それをすることで、本人や親の真摯な姿勢をアピールすることができます。例を挙げてみましょう。
●ウチの子供は慎重すぎるところがある。これは突飛な行動に出ない、間違いを起こしにくいという良い面もあるけれど、やはり親としてはイライラさせられるし、もっと積極性を持って行動してほしいと思う。表現は、「時として慎重になりすぎて、行動に移すことに時間がかかる傾向があります。これは自分で十分に納得したうえで行動したいという意思の表れだと思われますが、時として決断を早くすることも大切なことだと教えております」というように書こう。
●ウチの子供は頑固だ。なかなか親の言うことを聞かないし、幼稚園でも先生のおっしゃることに「だって僕はこう思うんだもん」と言い返すらしい。ほかの人の話を聞いて受け入れるという姿勢も学んで欲しいと常々思っている。書き方の表現としては、「やや頑固な面があり、自分の考えに固執してしまうことがあります。これは自分への自信と意思の強さの表れと思われますが、人の意見にもよく耳を傾けて受け入れることの大切さを常々話しております」と書こう。
という具合です。