連載企画 願書・面接資料の書き方

第20回



成人後から逆算して、今の子育てのあり方を考える

将来、わが子はどんな生き方をしてほしいのか‥‥。「願書・面接資料の書き方講座」では、まず、このテーマから書くことをお勧めしていますが、みなさん、難航しているようです。あまりむずかしく考えないでください。こんな生き方をしてほしいなあ、こんな大人になってほしい‥‥そんな漠然としたものでもけっこうです。

今、お子さんが5歳であれば、世の中に出るのは15年〜17年後です。どんな時代になっているかは誰にもわかりませんが、いくつかのキーワードは考えられます。たとえば、自立心。どんな時代になっても、自力で生き抜いていけるだけの逞しい人間になってほしいとは、親なら誰でも考えることでしょう。野生の動物の世界では、親離れする前に、エサをとる方法と危険から身を避ける知恵を教え込んだ上で巣から追い出しています。人間も同じようなものとはいいませんが、親が子どもにしてやれることは、とどのつまり、自力で生きていけるようにして世の中に送り出す、その一点につきると思います。問題は「自力で生きる」には、どんな育て方をしたらいいかです。それがむずかしいですね。でも、わが子が巣立つ十数年後を思い描いて、高校では何をしてほしいとか、中学では、小学校では‥‥と逆算していくと、今、どんな育て方をしたらいいかが、ちょっと見えてくるのではないでしょうか。

あるお父さんからは、「勝ち組とか負け組にとらわれない生き方をしてほしいと思っている」というメッセージをいただきました。考えさせられる一文です。たしかに、小泉さんが衆議院選挙で大勝してから、何となく「勝てば官軍」という風潮がはびこった感じがします。邪魔者や反対する人間は排除する、カネを積めばほしいものは何でも手に入る‥‥このお父さんだけでなく、こんなことはオカシイと考える人が少なくないと思います。世の中には思い通りにならないことがたくさんある、我慢しなければいけないときもある、自分に不利、損とわかっていてもそうしたほうがいい場合もある‥‥わが子にはそんなことを教えていきたいと結んでありました。お子さんは4歳ですから、私立を受験するなら2年先と思いますが、どの小学校を受験するのか、どんな志望理由になるのか、次のお便りが楽しみです。

やはり4歳の男の子をもつ、あるお母さんは、「おはようございます」と「お休みなさい」と言わせることと、名前を呼ばれたら「はい」と大きな声で返事をすること、そして大人(両親だけでなく、祖父母)の言うことは素直に聞くの3つを守らせるようにしていると書いてありました。挨拶と返事がきちんとできる子にしたいということは、受験をするしないに関係なくとても大切なことと思いますが、「大人の言うことを素直に聞く」という視点が新鮮です。

この4歳の男の子は、一時期、おじいちゃんとおばあちゃんは何でも自分の思い通りになると思いこんでいたようです。おじいちゃんには「お馬になれ!」、箸が落ちれば、「おばあちゃん、とって!」などと「命令口調」で言いつけていた場面を見て、お母さんは「愕然とした」ようです。おじいちゃんおばあちゃんは孫を叱るとかしつけるというのはなかなかできにくいようです。かわいいですからね。でも、保育園では先生の言うことは素直に聞くし、お友達にはやさしくしていて、いつもほめられているのに、おじいちゃんとおばあちゃんには暴君のように振る舞う姿を見て、「このまま見過ごしてはいけない」と感じたようです。

この「願書・面接資料の書き方講座」では、最終的には、志望校の入学願書や面接資料にそのまま書き写せばいいくらいまで練習していただきますが、本当の狙いは、「書く」ことによって、「考えていることを整理する」という点にあります。書くことによって、こうだと思いこんでいたことが実は違っていたとか、あまりこだわる必要もなかったと気づくこともあります。また、考えを整理するだけでなく、書くことによって、「今、何をしなければならないか」が見えてくるようになるという効用もあります。月に一度、「書く」ことに挑戦してみてください。




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